施設研究ニュース

2020年1月号

既設鋼橋の橋上ロングレール化照査例

1.はじめに

 軌道の維持管理省力化,騒音の低減および乗り心地の改善等を目的として,ロングレール(以下,LR)化のニーズが高い状況にあります.LR化をする際には,軌道の安全性を照査しますが,一般区間だけでなく橋りょう区間もLR化する場合には,温度変化に伴う力が橋りょう(桁,支承および下部工等)に対しても作用するため,軌道に加えて橋りょうについても安全性の照査を行う必要があります.
 そこで本稿では,既設の鋼橋りょう上をLR化する場面を想定し,軌道と鋼橋りょうの双方の設計計算を一つにまとめて例示した照査例を策定いたしましたので,その内容について紹介します. 

2.鋼橋りょう上でのロングレール化による影響

 鋼橋りょう上をLR化すると,温度変化によってレールと鋼桁が異なる特性で伸縮するため,線路方向に相対変位が生じます.設計上では,相対変位と締結装置のふく進抵抗力γに応じた付加軸力がレールへ作用し,その反作用FB(ロングレール縦荷重)が鋼橋りょうに対して作用します(図1).この力は,軌道に対しては,レールの破断時開口量や軸力に影響を及ぼし,鋼橋りょうに対しては,桁や支承部等の発生応力度に影響を及ぼします.
 これらのことから,橋りょう上を新たにLR化する際は,軌道に対する安全性の照査が必要となることに加えて,対象橋りょうがロングレール縦荷重を考慮して設計されていない場合は,橋りょうに対する安全性の照査が必要となります.

図1 設計で用いるロングレール縦荷重

3.照査例の構成

 ロングレール縦荷重は,上述のとおり軌道と橋りょうの相互作用であり,その大きさは,レール締結装置のふく進抵抗力や橋長等により決まります.ただし,例えば破断時開口量を小さくするためにはふく進抵抗力を大きく設定しますが,その場合は橋りょうに作用するロングレール縦荷重が大きくなる等,相互の照査結果に応じてふく進抵抗力等を調整する必要があります.本照査例では,その調整もできるように軌道と鋼橋りょうの双方の照査についてまとめている点に特徴があります(図2).
 照査例の対象は,軌道および橋りょうを主たるものとし,橋りょうについては,桁および支承部だけでなく,一部,基礎および橋脚く体に対しても照査の考え方を示しています.また,ロングレール化における軌道の照査は,最新の設計標準によることとしています.桁や支承等については,既設のものに対する照査であり,設計図に示される応力表や架設当時の材料の許容応力度を活用できる点が実務において有益であると考え,許容応力度法による照査方法を示しています.
 なお,照査例の一部では,後述する支承部の照査方法のように,近年の研究成果を取り入れました.

図2 照査例の構成

4.支承部の照査方法

 本照査例で新たに取り入れた,支承部の照査方法について紹介いたします.ロングレール縦荷重を考慮して設計されていない既設の鋼橋りょうでは,橋上LR化に伴う照査において,支承部が設計照査上の弱点となることが多くあります.特に,図3に示すような支承部のリブ前面モルタルの支圧破壊に対しては,照査を大幅に満たさない場合がほとんどでした.一方で,当該部位が支圧破壊したという事例はこれまでになく,現状の照査方法では,安全余裕を過度に有している可能性がありました.
 そこで本照査例では,支承部の破壊モードの同定および耐力評価を目的とした近年の研究1)から得られた知見を踏まえ,支承部の照査について,支承部が浮き上がるように破壊する実際の破壊モード(図4)に対応した精緻な照査方法の考え方を取り入れております.これにより,これまで設計照査上LR化が不可能であった橋りょうにおいてもLR化が可能になることが考えられます.

図3 設計上想定していた支承部の破壊モード
図4 同定した支承部の実際の破壊モード

5.おわりに

 本稿では,既設鋼橋の橋上LR化照査例について,照査例の構成や新たに取り入れた照査方法の一部を紹介いたしました.本照査例を参照いただくことでLR化の推進の一助となり,また,LR化の際の当たり計算等にご活用いただければ幸いです.なお,本照査例は今年度末に発刊予定です.

参考文献

1) 小林裕介,西川雄也,福本守,萬代能久,片岡宏夫:ロングレール化に伴う既設鋼橋への影響評価,鉄道総研報告,Vol.27,No.6,pp.37-42,2013.6.

執筆者:構造物技術研究部 鋼・複合構造研究室 井上太郎
担当者:構造物技術研究部 鋼・複合構造研究室 小林裕介,斎藤雅充
    軌道技術研究部  軌道構造研究室   西宮裕騎

線路下横断工事における簡易工事桁の構造解析手法

1.はじめに

 近年,踏切解消や河川改修工事の一環として,線路直下を低土被りで横断するトンネル工事が数多く実施されています.安全な列車走行を確保するため,これらの工事の多くは軌道に与える影響の小さい特殊トンネル工法(図1)が採用されるほか,計測監視や簡易工事桁(図2)の敷設などが行われます.
 本稿では,この簡易工事桁の設計に用いる新たな地盤反力係数の設定方法を提案します.

図1 特殊トンネル工法の例 (エレメント推進・けん引工法)
図2 簡易工事桁の例

2.提案する地盤反力係数の設定方法

(1)従来の設計方法

 簡易工事桁の構造は,一般に,類似事例を参考にする場合と構造計算を用いて設計する場合があり,構造計算による方法では,陥没範囲と周辺の地盤反力低下を考慮した構造解析モデルが提案されています.
 具体的には,図3に示すように,簡易工事桁を弾性支承上の梁でモデル化し,エレメント上端から立ち上げた45°の範囲を設計上の陥没範囲として地盤反力係数をゼロとし,エレメント下端から立ち上げた45°までの範囲は平地上の地盤反力係数を1/2に低減するものです.
 この方法は,地盤の良否を考慮できず,とくに土被りが大きくなると,合理的でなくなります。

図3 現状の構造計算の方法

(2)提案する設計方法

 鉄道総研では,従来の地盤反力係数の設定方法を改良した図4の構造計算の方法を提案しました.地盤の極限支持力が上載荷重を下回る範囲を設計上の陥没範囲(地盤反力係数をゼロとする範囲)とするとともに,その周囲の地盤反力係数は,斜面近傍の基礎の方法を準用して低減させるものです.
 斜面近傍の基礎の方法とは,「鉄道構造物等設計標準・同解説(基礎構造物)」に示されるもので,斜面近傍地盤の極限支持力が平地の場合よりも小さくなることに着目し,斜面近傍と平地上の極限支持力の比を求め,これを地盤反力係数の低下率とする経験則です.

図4 提案する構造計算の方法

3.掘削実験との比較検証

 提案する方法の妥当性を検証するため,実験土槽内の模擬地盤で陥没を発生させ,このときの地表面の地盤反力係数の低下量との比較を行いました.

(1)実験方法

 使用した掘削試験機の模式図を図5に示します.角形鋼管掘削機の先端に取り付けたロータリーヘッダーで切羽前方を掘削した後に,掘削機自体を油圧ジャッキで推進する作業を繰り返すことで,エレメント掘進を模擬するものです.図6に示すように,切羽面が土槽中心位置に到達した時点で先掘りを1.0D程度行い陥没を発生させ,小型の平板載荷試験を実施して陥没周囲の地盤反力係数を測定しました.

図5 掘削試験機の模式図
図6 陥没と地盤反力の測定状況

(2)実験結果

 地盤反力係数の実験結果と,従来モデルおよび提案モデルで算定した結果を図7に示します.縦軸は陥没時の地盤反力係数の低下率λを示しており,横軸は陥没中心からの距離を示しています.実験結果では陥没中心に近づくにつれ,地盤反力係数は連続的に小さくなる傾向を示しました.従来モデルと提案モデルを比較すると,いずれも安全側の評価となっていますが,提案モデルのほうがより実験結果に近い分布となっていることが分かります.

図7 提案・従来モデルと実験結果との比較

4.試計算による比較

 従来モデルと提案モデルによる試計算を実施して,簡易工事桁の主桁に発生する断面力を比較しました.なお,簡易工事桁は図2に示す構造としました.荷重はE-17荷重,列車速度は徐行手配を行うことを想定し50 km/hとしました.
 その一例として,スパン中央に発生した最大曲げモーメントを図8に示します.なお,提案モデルは粘着力の違いを考慮できるため,粘着力cを10 kN/m2,20 kN/m2としました.従来モデルは土被りが大きくなると最大曲げモーメントが増加していくのに対し,提案モデルでは最大曲げモーメントはほとんど同一となりました.この結果より,土被りが大きくなると提案モデル用いるほうが合理的な設計となることが分かります.

図8 最大曲げモーメントの試算結果

5.おわりに

 簡易工事桁を構造解析により設計する際の新たな地盤反力係数の設定方法を提案しました.本稿が設計の一助となれば幸いです.

執筆者:構造物技術研究部 トンネル研究室 仲山 貴司
担当者:構造物技術研究部 トンネル研究室 板谷 創平

バラストの破砕・細粒化に関する基礎検討

1.はじめに

 道床バラストは,まくらぎの周囲および底面に敷設され,列車荷重を支持しています.しかし,長年に渡り同じバラスト道床を使用し続けると,新しい道床バラストの基準粒度から,徐々に細かい粒径の粒子が増えることで粒度分布に変化が生じます.バラスト道床内に細かい粒子が増加すると,保水性が向上するとともに透水性が低下し,降雨等の水分が道床バラスト内に滞水しやすい状況となり,噴泥に至ると考えられます.一方,経年による道床バラストの粒度分布の変化の過程は,これまでに十分に検討されていません.そこで本報告では,道床バラストを破砕・細粒化に至らしめる要因について検討するため室内で要素試験を実施し,試験前後の粒度分布を検討しましたので報告します.

2.試験条件,試験方法

 本試験では,列車の繰返し載荷による影響,繰返し載荷に加えてつき固め作業による影響およびレール継目部等で生じる衝撃荷重の影響を検討しました.試験に用いた円柱モールドは直径300mmおよび高さ300mmであり,基準粒度内の粒度分布を有する道床バラストを乾燥密度1.6×10<sup>3</sup>kg/m<sup>3</sup>になるように締め固めて供試体を作製しました.円柱モールド内の側面および底面にはゴムシートを設置し,過度に道床バラストが拘束されない条件としました.また試験方法の詳細は以下の通りとしました.

1) 繰返し載荷の影響

 図1に示す油圧アクチュエータを用いて,円柱モールドの全断面に繰返し荷重を載荷しました.荷重条件は,一般的な列車荷重である静止軸重170kNに対し,速度の衝撃率を考慮して3倍し,レールの荷重分散効果による車輪直下のまくらぎ1本の荷重分担率0.4倍を考慮した圧力260kPaより設定しました.載荷周波数は25Hzの正弦波とし,載荷回数を1000万回としました.想定した累積通過トン数は5.1億トンとなります.道床バラストの岩種は安山岩を用いました.

図1 繰返し載荷の試験状況

2) 繰返し載荷およびつき固め作業の影響

 試験方法は,「1)繰返し載荷の影響」と同条件で繰返し載荷を行うこととし,125万回ごとにつき固め作業を1セット実施しました.つき固め作業1セットの内容は,円柱モールドにタイタンパツールを15秒間挿入して引き抜く動作を20回実施することとしました.想定した保守頻度は,年4回程度のむら直しの7年分となります.また,道床バラストは安山岩とチャート岩の2種類の岩種を用いました.図2に示す道床バラストの石質試験の結果より,チャート岩は安山岩よりも破砕・細粒化しやすいと予測されました.

図2 石質試験の結果

3) 衝撃荷重の影響

 衝撃荷重の影響を検討するため,図3に示す試験装置を用いて,重錘を自由落下させて道床バラストに繰返し載荷を行いました.落錘荷重は圧力260kPaになるよう落錘高さを調節しました.落錘直後の載荷波形より算出した載荷周期は0.023秒となり,周波数に換算すると44Hzとなりました.また載荷回数は12万回としました.

図3 落錘試験の試験状況

3.試験結果

 各試験後の粒度分布を示します.図4より,繰返し載荷のみでは試験前後の粒度分布に大きな変化は見られず,細粒分もほとんど発生しませんでした.図5に安山岩を用いた繰返し載荷のみの影響および繰返し載荷につき固め作業を加えた条件での試験後の状況を示します.つき固め作業を加えることで破砕・細粒化が進行することがわかりました.また図6より安山岩およびチャート岩は,粒径75μm以下の通過質量百分率がおおよそ5%となりました.安山岩は,粒径26.5mm以下はほぼ同じ通過質量百分率であり,粒子の破砕よりも細粒化が進行しました.チャート岩は粒径26.5mm以下がなだらかに低下しており,破砕も促進されて中間的な大きさの粒径が増加することで全体的に粒径が小さくなりました.図7より,12万回の繰返し落錘試験前後で,粒径26.5mm以上から通過質量百分率が高くなっており,落錘により粒子に破砕が生じたと考えられます.繰返し載荷1回あたりの各粒径の粒度分布の変化率より,1000万回載荷後の粒度分布を推定すると,粒径26.5mm以上だけでなく粒径75μm以下も通過質量百分率が増加し,破砕にともなう細粒化も進行すると考えられます.

図4 試験結果(繰返し載荷の影響)
図5 試験後の状況
図6 試験結果(繰返し載荷とつき固め作業の影響)
図7 試験結果(衝撃荷重の影響)

4.まとめ

 繰返し載荷のみでは道床バラストの破砕・細粒化は進行せず,つき固め補修を行うと粒度分布が大きく変化しました.また安山岩よりチャート岩において繰返し載荷およびつき固め作業を行うことで大きく破砕・細粒化が発生しました.さらに衝撃荷重によりバラストの破砕とともに細粒化も進行することが考えられます.

執筆者:軌道技術研究部 軌道・路盤研究室 木次谷一平
担当者:軌道技術研究部 軌道・路盤研究室 中村貴久,福中力也,桃谷尚嗣

発行者:楠田 将之  【(公財) 鉄道総合技術研究所 施設研究ニュース編集委員会 委員長】
編集者:木次谷 一平 【(公財) 鉄道総合技術研究所 軌道技術研究部 軌道・路盤】

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