8.車両に用いる高分子材料のリサイクル技術

 焼却時の環境汚染や最終処分場の収容力不足など、車両に用いる各種樹脂材料の廃棄物処理が社会的な問題となっています。そこで、車両更新とともに廃棄される高分子樹脂材料について、材料種別や廃棄発生状況を考慮し適用可能なリサイクル技術を検討しました。

(1)樹脂材料(FRP)のリサイクル技術
 樹脂材料のうち、熱可塑性樹脂は、再生利用やサーマルリサイクル(燃焼熱回収)などの現状のリサイクル方法が適用できることが分かりました。しかし、熱硬化性樹脂材料であるFRPは、廃棄発生量が少ないため、比較的処理が容易で処理量の変動の影響を受けにくいマテリアルリサイクルが有効であると考えました。具体的には、廃FRPの粉砕物を樹脂成型品の充填材やコンクリートの細骨材として利用するもので、樹脂成型品では、機械的強度の面から、40wt%まで粉砕物を混入することが可能なことを明らかにしました(図1、2)。これにより、トラフや樹脂箱等の鉄道用材料に使用できる見込みが得られました。
 また、新たに製作される車両に対しては、リサイクル性の良い樹脂材料として、ハロゲンを含まない熱可塑性樹脂を使うことが望ましいとの提案を行いました。

図1 樹脂成型品の充填材含有に対する曲げ強度


FRP製空調風洞切出し片

粉砕後のFRP粉末
図2 成型物充填材としてのFRPの粉末化

(2)塩化ビニルのリサイクル技術
 車両の床材に使用される塩化ビニルは、高い耐侯性、耐久性、難燃性を有しますが、その処理が難しいため、回収処理し再利用する技術の開発が強く望まれています。
 このため、使用済み床材を利用して粉砕再成形品および溶融再成形品を作製し、促進耐侯性劣化試験および各種物性試験を行い劣化状態を調査しました。その結果、促進耐侯性劣化試験2000時間(屋外環境10年相当)終了後も引張り強さや動的粘弾性等の物性の低下は認められず、長期屋外使用材料として優れた性能のあることが明らかになりました(図3)。また、分子運動性の変化に起因した劣化のメカニズムが把握できたため、今後、さらなる寿命延伸の可能性もあります。

試作品作成
(1) 引張強さ (2)動的粘弾性
(使用済み床材10wt%配合)
図3 性能評価試験結果



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