2.鉄筋コンクリート構造物の塩化物イオンに関する耐久性照査法

 近年、コンクリート片の剥落等、鉄筋コンクリート(RC)構造物の早期劣化が問題となっており、RC構造物の耐久性向上が課題となっています。RC構造物の主要な劣化原因の一つに、塩化物イオンの侵入による鉄筋の腐食があります。土木学会のコンクリート標準示方書には、塩化物イオンに関する耐久性照査法が示されていますが、コンクリートに侵入する塩化物イオン量の調査データが限られているため、定量的には必ずしも合理的とはいえない状況にあります。そこで、全国の海岸近くに位置する鉄道構造物の塩化物イオン量の実態調査をもとに、塩化物イオン量の影響を受けないための合理的なかぶり(コンクリート表面から鉄筋の表面までの最短距離)の決定方法を定めました。
 調査は、海岸から概ね1,000m以内に位置する鉄道橋の橋脚約120箇所(図1、図2)を対象に、コンクリート内部における塩化物イオン量の深さ方向分布を測定しました。そして、コンクリート中の塩化物イオンの移動を一次元線形拡散現象とみなしてコンクリート表面の塩化物イオン濃度を推定し、さらに、それをもとに建設から100年後の値を推定しました。その結果、表面塩化物イオン濃度には地域差があること、また、その値は土木学会示方書の値を下回ることが明らかになりました(図3)。
 以上の検討結果をもとに、RC構造物の必要かぶりを試算しました。その結果から、鉄筋位置における塩化物イオン量を腐食発生限界濃度以下にするための必要かぶりは、日本海側では、土木学会の方法に比べて50mm以上減じることができるようになりました。また、条件の緩やかな太平洋側や瀬戸内海側では、海岸からの距離が250m以上の位置にある構造物は、中性化の照査からかぶりが定まるため、塩化物イオンに対する検討が不要になりました(図4)。この成果は現在改定作業中の鉄道構造物等設計標準に反映される予定です。








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