1.鉄道システムのライフサイクルアセスメント

 鉄道システム全体としての地球環境負荷の定量的な評価方法を確立するため、鉄道を構成する各要素、さらにはそれらの集合体である鉄道システムの環境負荷をライフサイクルアセスメント(LCA)の手法を用いて評価しました。全体に占める環境負荷の比率が大きい車両走行については、各要因の影響についても検討しました。
 東海道新幹線を対象に評価した事例を示します。インフラの構成要素を構造物、軌道、電車線、信号・通信、駅、車両の6分野に分け、建設段階から保守等の使用段階までの範囲で、物質や資源投入を積算する積み上げ法によりLCAを実施しました。CO2排出量は、構成要素別では車両が88%を占め、ライフステージ別では運用エネルギーが87%を占めています。東海道新幹線のような輸送密度の高い線区では、インフラを含めた場合でも車両走行に伴うCO2排出が大きな比率を占めています(図1)。また、積み上げ法の結果は別の手法である産業連関分析法によるものと良く整合することを確認しました。また、CO2排出に大きな比率を占める車両の走行エネルギーに及ぼす要因の影響評価では、例えば700系の東京−新大阪間「のぞみ運転」走行時のCO2排出量は、車両重量を10%軽くすることで4.5%、空気抵抗を10%低減すると5.7%の減少になると推定しました。
 次に産業間の取引額から、環境負荷量を推定する産業連関分析法により交通機関別に年間CO2排出量を評価した事例を示します。全排出量は、鉄道と比べて乗用車、トラックが際だって大きくなっています。全排出量に占める運行時の割合は、鉄道が4割程度(全国平均であるため輸送密度が東海道新幹線に比較して低いなどの理由により、運行時の比率が低くなっている)であるのに対して、自動車等は7割程度と大きくなっています(図2)。単位輸送量当たりのCO2排出量は、鉄道やバスが小さな値であり、自動車、トラックおよび航空機が大きな値を示しています(図3)。これらの値を用いて、乗用車、トラックから鉄道やバスへ輸送量がシフトする場合のCO2排出削減量を試算すると、インフラ等の増設を行ったCO2排出量を含めても、その効果は大きく、例えば乗用車の15%が鉄道やバスへ、航空機の10%が鉄道へ、トラックの10%が鉄道へモーダルシフトすると、運輸部門における約7%に相当するCO2排出量が削減されます。
 以上のように本手法を用いれば、環境負荷を定量的に評価することが可能になります。








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