2.基礎技術開発
 山梨実験線には、建設当時の超電導磁石を前提として、信頼性を重視した地上コイルを投入しましたが、国立研究所で行う基礎技術開発においては、コスト低減のために大幅に簡略化した地上コイルと、これに対応できる耐振動特性に優れた超電導磁石の開発を進めています。また、車上電源の一層の高性能化にも取り組んでいます。

(1)超電導コイルの振動と機械的発熱との関係
 簡略地上コイルの採用に伴う超電導磁石の開発課題の一つに、走行中の超電導コイルの発熱が挙げられます。そこで、超電導コイルの振動と振動に伴う発熱、特に簡略地上コイル採用時に顕著になる超電導磁石のヨーイング振動と発熱との関係を、電磁的な影響を受けない方法である機械的加振試験により検証しました。超電導コイルを組み込んだ模擬外槽ごと機械加振試験装置に入れて、外から油圧により左右方向に加振した時のヘリウム蒸発量から発熱量を測定しました(図6)。その結果を従来の超電導コイルの発熱原因であるねじれ変形時の発熱と比較したところ、ヨーイング振動による発熱はねじれ振動の発熱に対し、同等の振動速度において非常に小さいという結果を得ました(図7)。このようにヨーイング等の剛体振動による発熱は小さいことが確認できたことで、簡略地上コイル対応超電導磁石の走行時の発熱低減について見とおしを得ることができました。

(2)日の字PLGコイルの開発
 浮上式鉄道の地上コイルはその敷設数が莫大なものとなるため、コスト低減、施工性の向上ならびに高い信頼性が求められています。そこでコイル数量削減による建設コスト低減策として、1つのコイルで推進・浮上・案内の3機能を兼用させた、高耐圧(33kV仕様)の日の字PLG(Combined Propulsion, Levitation and Guidance system)方式コイルの開発を行いました(図8)。

 まず、PLGコイルの基本諸元をもとにしたコイル形状等の基本構成についての概念設計を行い、小型かつネジ部省略等による高信頼性化を目指したコイル間接続部を試作しました(図9)。さらに、コイル間接続部の長期屋外課通電試験、長期振動課電試験等により耐久性能確認試験を実施しました。その結果、地上コイルへの適用に問題がないことを確認しました。

 これらの成果を踏まえて、さらに上下単位コイルの高さを変更した高耐圧日の字PLGコイルの試作と、各種性能確認試験を実施しました。その結果、PLGコイルとして充分に満足する初期絶縁強度等を有していることを確認しました。
 今後は、山梨実験線に仮設してその基本性能の確認を行うと同時に、PLGコイルの長期屋外課通電試験や繰り返し載荷試験等を実施し、長期的な耐久性能を評価していく予定です。

(3)改良方式誘導集電装置
 超電導磁気浮上式鉄道の車上電源として期待される誘導集電装置は、地上コイルとの間に新たな電磁力を発生できることから、車両の乗り心地向上を目的とする磁気ダンピング発生装置としての利用が検討されています。今回、より発生力を大きくできる改良方式を提案し、開発を進めています。
 本方式では、集電コイル配置を工夫することによって、超電導磁石と同じピッチの磁界を発生し(図10)、地上コイルとの間に同じ電流あたり従来方式の約4倍の上下力を発生することができ、大きな乗り心地向上効果が期待されます(図11)。また上側コイル位置を改良することによって、従来方式の約1.7倍の集電電力が得られる見込みです。
 本方式では超電導磁石と同じピッチの磁界を発生するための電流を通電できる新しいPWM コンバータが必要であり、今回開発を行い、その基礎性能を確認しました。
 2003年度には、本集電コイルを製作して国立研究所にて超電導磁石、コンバータと組み合わせた定置試験を実施して総合性能を確認し、その後山梨実験線において実車走行試験を実施する予定です。






HOME
RTRI ホームページ

Copyright(c) 2003 Railway Technical Research Institute, Tokyo Japan, All rights reserved.