2.長寿命で低コストな貨車用アンチロックブレーキシステム

 高速コンテナ貨車は、電車と同等のブレーキ性能を求められます。その一方で、車輪フラットの発生による車輪保守、振動・騒音の発生などの課題を抱えています。しかしながら、貨車用アンチロックブレーキシステム(以下、ABS)の開発は、電車用ABSとは異なり、電源の確保やコスト低減の課題があり、実用化に至っていません。そこで、貨車用ABSの構成に不可欠な蓄電部や省電力滑走防止弁を含むシステムを開発しました。
 まず、無電源の課題を解決するため、車軸軸端に速度センサを兼ねた発電機を設け、発生した電力を電気二重層キャパシタ(図1)に蓄電する方式を開発しました。本キャパシタは、水溶液系の電解液とセラミックス製の容器を採用しており、寿命加速試験によって、10年以上無保守で屋外温度環境下でも安定した性能を保てる見通しを得ました。また、蓄電部の容量を小さくしてコストを低減するため、省電力型の滑走防止弁を開発しました(図2)。本滑走防止弁は、1つの電磁コイルで締切と排気の2つの機能を共有する弁構造であり、絶縁強化と弁体摺動部の削減等の特徴もあります。これにより、省電力(電車用従来弁の1/10以下)と耐候性の双方を確保しつつ、電車用従来弁の1/2以下の価格に抑えることができました。
 これらの要素部品をABSとして組立て、貨車に搭載して走行試験を行い、貨車用ABSとしての機能を満たしていることを確認しました。この貨車用ABSにより、自動空気ブレーキ方式でありながら、通勤電車並のブレーキ減速度の確保と車輪フラット防止との両立が可能となりました。
 なお、本研究は国土交通省の補助金を受けて実施しました。


図1 電気二重層キャパシタ(矢印)

図2 省電力滑走防止弁(矢印)




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