1.ピエゾ素子を用いた車両内騒音の低減法

 鉄道車両の軽量化は速達性や省エネルギに貢献している一方、一般に車内騒音発生の観点からは不利になります。今後、車内快適性への要求はさらに高まると予想され、車内騒音の低減は重要な課題となっています。
 そこで、車内騒音増大の原因の一つである床板の曲げ振動を低減するため、大きな質量増を伴わない対策としてピエゾ(圧電)素子を用いた放射音低減手法を開発しました。この手法は、床板に貼付したピエゾ素子が振動によって変形する際に,電気エネルギ(電圧)を発生するという特徴を利用します。この電気エネルギを熱として散逸させることによって、床板の減衰が増加し、振動とともに車内に放射される騒音を低減します。
 新幹線車体の腰掛一脚分相当のアルミ合金製床板(約3m2、20kg)を対象として本手法の有効性を検証しました(図1)。床板には、面外曲げ振動の振幅が最も大きくなる中央部にピエゾ素子を貼付し、これを抵抗とコイルから構成される電気回路に接続しました。素子の質量は2枚で約300g、回路を含めても1kg以下であり、質量増は小さく抑えられています。床下に設置した加振器により床板を上下方向に加振し、上方のマイクロホンで放射音圧を測定した結果を図2に示します。ピエゾ素子による低減対策を実施すると、曲げ振動に対応する周波数で音圧が1/2程度となり、本手法が放射音低減に有効であることを確認しました。
 今後は、実車両により評価を行った上で、屋根、側面板などの個所にも適用範囲を広げ、実用化を目指す予定です。


図1 加振試験の実施状況

図2 測定した放射音圧の低減効果



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