7.列車のトンネル緩衝工突入時における圧縮波発生現象の解明

 現在、多数の新幹線トンネル坑口にトンネル微気圧波低減のための緩衝工が設置されています。緩衝工はトンネル断面積の1.4倍程度の断面積を有する延長フードで、その側面や天井面に開口部が空けられており複雑な構造となっています。そのため、緩衝工が設置されたトンネル坑口へ列車が突入する時にトンネル内で圧縮波が発生する現象は複雑で、不明な点が多く残されていました。
 そこで、ボストン大学と共同で、現象に関する物理モデルを構築し、圧縮波の予測を解析的に行うための基盤を確立しました。本研究では、列車先頭部のフード(緩衝工)突入時に発生する現象を複数の基本的な現象(フード入口と先頭部の相互干渉、側面開口部と先頭部の相互干渉、フード・トンネル接続部と先頭部の相互作用、圧力波の多重反射、側面開口部から吹き出す噴流、フード入口で形成される渦輪、列車側面・トンネル壁面の摩擦)に分けて調べました。
 一例として、緩衝工の側面開口部から吹き出す噴流(図1)がトンネル内の圧縮波に及ぼす影響を理論解析によって明らかにした結果を図2に示します。噴流の寄与を考慮に入れることにより圧縮波の波形が従来に比べ正しく予測できています。今後はここで得られた知見を総合して、列車の緩衝工突入時に発生する圧縮波を精度良く短時間で計算できる方法を開発します。これにより、模型実験や大規模数値計算を繰り返し実施してきた緩衝工の設計、列車先頭部形状の最適化等を飛躍的に効率化することができます。


図1 側面開口部から吹き出す噴流

図2 側面開口部があるときの圧縮波に
関する理論と実験の比較



HOME
RTRI ホームページ

Copyright(c) 2004 Railway Technical Research Institute,Tokyo Japan, All rights reserved.