浮上式鉄道は、実用化技術の確立を目指し、『信頼性・耐久性能の検証』『コスト低減のための技術開発』、および『車両の空力的特性の改善』を課題として、2000年度から設定された5ヶ年計画に基づき、技術開発を続けています。2003年4月には、国土交通省の超電導磁気浮上式鉄道実用技術評価委員会が開催され、得られた成果をもとに「中間とりまとめ」が行われ、「2004年度末に向けて、所期の技術開発目標の達成、超電導磁気浮上式鉄道の実用化のための基本的な技術の確立が着実に進捗している」と評価されました。
 2003年度は、2002年度に導入した新型車両などの検証を引き続き行うとともに、『信頼性・耐久性能の検証』の一環として従来の記録を更新する連続走行試験や速度向上試験を行いました。また国立研究所においては、地上コイルや超電導磁石等についての、基礎技術開発を進めました。
 なお、以下の技術開発は、国土交通省補助金を受けて実施しました。

1.山梨実験線における技術開発
(1)実験線走行試験の推移
 山梨実験線では、引き続き信頼性・耐久性を検証する高速連続走行試験を実施するとともに、より高いシステム性能を検証する目的で2,500kmを越える連続走行試験、550km/h以上の最高速度向上試験を実施しました。また、コスト低減を目的として、新方式のガイドウェイや地上コイルの技術開発を進め、実験線の一部区間に導入して、走行試験で特性確認とデータ収集を実施しました。さらに、大深度地下走行を想定して、トンネル区間に模擬的な立坑を設置し、空力に関わる基礎データを取得しました。
 2003年度の全走行日数は150日、年間走行距離は約7万7千kmであり、1997年度の走行開始からの累積走行距離は34万8千kmを越えました。また、2003年度初からは新型車両を含む4両編成で最高速度を450km/hから500km/hへ上げました。2003年度の試乗者数は2万5千名に達し、1998年度からの累積で6万7千名を越えました。2003年度の実験線における走行試験の推移を図1に示します。また、図2に1997年度からの年間走行距離の推移を示します。


図1 2003年度走行試験の推移


図2 1997年度からの年間走行距離の推移

(2)連続走行試験
 2003年度は2002年度より高密度な高速繰り返し走行試験を実施しました。これに加えて、営業線において1列車が1日で走行すると想定される2,500〜3,000kmに匹敵する距離を1日で走行しました。1日の走行距離は、2,800km以上に達しました。加速から400km/h以上の高速走行を経て減速停止するパターンを繰り返すことにより超電導磁石や脚装置などの車上設備では営業線以上の高頻度で、また、き電区分開閉装置をはじめとする電力供給設備ではほぼ営業線に匹敵する頻度で、走行試験を実施しました。この結果から、現行システムの信頼性・安定性の高さが確認できました。

(3)最高速度向上試験
 高速走行性能に対する現行設備の信頼度を検証する目的で、設計最高速度550km/h以上の速度向上試験を段階的に行い、12月2日に2回にわたり最高速度581km/hを達成することができました。
 図3に示すランカーブのように、2回の走行では左側甲府方より40‰下り勾配区間で加速し、8.5km、92秒走行後に581km/hに到達し、約900mにわたり等速走行して、その後減速、停止しました。この間、超電導磁石をはじめとする車両設備の振動や変位は許容範囲に収まっており、安定した性能が発揮されました。これにより、高速走行に対するシステム全体の信頼度の高さを実証することができました。


図3 最高速度581km/h走行時のランカーブ

(4)PLGコイル特性確認試験
 構成の簡素化による地上コイルのコスト低減を目的として、推進・浮上・案内の3機能を兼用させた高耐圧(33kV仕様)の日の字PLG(Combined Propulsion, Levitation and Guidance system)方式コイルを開発しています。PLGコイルでは、モールド内コイル構成を田の字形状から日の字形状として、浮上コイルピッチを従来の2倍の0.9mにすることで、揚抗比(浮上力/抗力)を改善しています。また、上下のコイルを非対称形状とすることにより超電導磁石への加振力を低減する工夫も盛り込んでいます。特性改善効果の事前検討結果から、日の字化により速度500km/hで約30%の揚抗比の増大が見込め、上下非対称化により磁石の左右振動軽減にも寄与できることがわかりました(図4)。
 日の字PLGコイルを山梨実験線に仮設(図5)し、車両通過時の電磁力特性や動的特性について検証試験を行い、所期の特性を有していることを確認しました。

(a)揚抗比の改善
(b)超電導磁石への加振力低減
図4 日の字・上下非対称化によるPLGコイルの特性改善効果



図5 PLGコイルの仮設状況



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