既開発の電力リサイクル電車用車載充電池(リチウムイオン二次電池)を1500V直流電車に活用するために、既存電車に取付け可能な電力変換器(昇降圧チョッパ)とその制御アルゴリズムを開発しました(図1)。これにより電車を架線集電と車載充電池の両方式によりハイブリッド制御できるようになりました(図2)。この電車は、ブレーキ作動時に架線へ電気を戻せない場合には車載の充電池にこれを蓄えることで回生ブレーキの「失効」や「絞込み」を大幅に軽減できます。
電圧1500Vにおける実モータ1台による100km/hまでの車両試験台試験、トラム級試験電車による750V集電における速度50km/hまでの所内走行試験により、ハイブリッド制御による力行時や回生ブレーキ作動時における架線電圧の遮断/復帰時の挙動、架線電流上限値設定下での力行・回生性能、パンタグラフ下降/上昇時の挙動等といった異常時の対応特性の確認を行いました。その結果、架線との間で授受できなくなった電気エネルギーは車載充電池に蓄えられ、エネルギー分担変更を行いながら、このような異常時にも円滑に加速および減速を継続できることが分りました(図3)。また、所内走行試験時の50km/hからのブレーキエネルギー回収率は約70%でした。
線区や車両ごとの回生絞込み量の実態に見合った充電池を搭載することで回生失効を大幅に減らせる電車を実現できる見通しが得られ、回生電力の有効利用による省エネルギー化、回生ブレーキの信頼度向上、機械ブレーキ動作低減による制輪子や車輪の省保守化、が期待されます。
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