3. 基礎技術開発
 国立研究所では、超電導磁石や地上コイルの長期耐久性試験を中心に研究開発を行いました。また、き電回路の地絡時の早期復旧を支援する標定装置の開発と試験を行いました。

(1) 超電導磁石の耐久性検証
 超電導磁気浮上式鉄道の実用化に向けた重要課題の1つとして、超電導磁石の営業線寿命相当の耐久性の検証を行いました。
 超電導磁石にかかる負荷変動としては、励消磁、ヒートサイクルや走行による振動があります。前二者については山梨実験線の走行試験により営業線寿命相当の耐久性を検証済みですが、走行による振動の影響については山梨実験線のこれまでの走行試験では負荷回数として不足するため、これを補完するために定置加振試験を実施しました(図9)。
 走行時に超電導磁石に加わる振動影響として最も大きいのは共振時の振動であり、浮上コイルからは上下方向に捻れ力、推進コイルからは左右方向に曲げ力が超電導磁石全体に働きます。超電導コイルや荷重支持材などの主要構成部品については単体での耐久性を確認済ですが、低温配管を含めた超電導磁石全体での振動耐久性を新たに確認しました。60度ピッチ田の字浮上コイル配置と120度ピッチ単層推進コイル配置における実走行での振動を模擬した営業線15年相当の加振を実施した結果、真空槽の真空度、低温配管等の各部の状態に異常が認められないとともに、各部の振動状態に経時変化が無いことを確認しました。走行試験やこれまでの要素試験の結果と合わせて、超電導磁石が営業線寿命相当の耐久性を有していることを確認できました(図10)。


(2) PLGコイルの長期屋外課通電試験
 地上コイルは、30年以上にわたる長期間の屋外使用を前提としているため、その耐久性を検証することは浮上式鉄道システムの信頼性を確保する上で重要な課題となっています。これまでに建設コスト低減策として開発を行ってきたPLGコイル(Propulsion, Levitation and Guidance coil;同一の地上コイルに推進、浮上、案内の3機能を兼用させたもの)を対象として耐久性検証の一環である、長期屋外課通電試験を実施しました。
 この試験は、180日の試験期間に対して、浮上式鉄道の営業線における35年間の使用に相当する電圧を印加しながら、1日あたり18時間通電/6時間休止の通電によるヒートサイクル(常温〜90℃)を加えて行いました(図11)。その結果、長期間にわたる課通電負荷に対し、コイル外観、および絶縁特性(図12)に顕著な経時的変化がなく、PLGコイルが熱的耐久性を有していることを確認することができました。

(3) き電回路における地絡故障点標定手法
 超電導磁気浮上式鉄道のリニアモータにおいては、地上のガイドウェイ側壁に多数の推進コイルが配置されています。この推進コイルを含むき電回路において地絡故障が発生した際に、その発生位置を直ちに特定すること(故障点標定)は、故障箇所の早期復旧を支援する上で重要な課題となります。このため、浮上式鉄道のき電回路に適した故障点標定手法を開発し、模擬地絡試験による検証を実施しました。
 き電回路において、ある推進コイル群(セクション)で1相地絡故障が発生した場合(図13)、変電所で地絡故障を検知し、電源であるインバータを直ちに停止します。その際、変電所に設置されたフィルタと、それまで通電していたセクションとの間に過渡的な振動電流が流れます。この電流の振動周波数は、変電所から当該セクションまでの距離、および当該セクション内部の故障点に応じて変化する特性があります。したがって、これらの特性をシミュレーション等に基づいて事前に取得することにより、地絡故障時の過渡電流周波数からセクション内部の故障点を標定することができます。
 開発した標定手法を検証するため、山梨実験線において模擬地絡試験を実施しました。その結果、本手法によりセクション全長に対して5%程度の誤差で故障点の標定が可能であることを確認しました。




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