列車風は、列車が駅などを通過する際に引き起こす風ですが、列車速度に依存して強くなります。このため、列車の高速化を進める際には、列車風が駅ホーム上の人に及ぼす影響を事前に考慮し、安全性の確認・検討を行う必要があります。 高速列車による列車風の特徴である列車先頭部通過時に見られる変動風および通過後の持続的な定常風を対象として、風洞で被験者試験を行い(図1)、風速と人が風から受ける力(床荷重の水平成分)の関係、荷重と姿勢のふらつきの関係などを調べました。変動風および定常風ともに風速の2乗に比例した荷重が生じること、変動風では高い周波数では荷重が低減し、姿勢のふらつきも小さくなることが分かりました。また、姿勢がふらつき始める直前には床荷重の垂直成分が急激に変動し、もっともふらつきやすい人でこのときの床荷重の水平成分は30Nでした(図2)。 試験等で得られた結果に基づき、人間工学的観点から駅ホームの列車風評価手法を提案しました(図3)。まず応答周波数10Hz 相当の風速計を用いて列車通過時の風速を計測します。風洞試験から求められた特性をもつ列車風評価用フィルターを使い、風速の2乗値に高周波成分を低減する処理をすることで人体にかかる荷重波形を求めます。その最大値が基準(30N)以下であれば人の姿勢が安定しており、列車風は安全な範囲にあると評価します。この評価手法により駅ホーム上の列車風に対して実態に即した安全性評価を行うことができます。