線路上空を利用した建物の構造設計では、一般的な橋上駅の高さである20m以下の建物を対象とした「線路上空建築物(低層)構造設計標準」が1987年に制定され、標準的な構造設計手法として適用されてきました。しかし、線路上空空間の高度利用に対するニーズが高まる中、高さ20mを超える場合には煩雑な構造解析などを行わなければならないことから、設計標準の適用範囲の拡張が求められていました(図1)。 線路上空建築物は、施工上の制約から一般建築物とは異なり基礎杭間を繋ぐ地中梁が省略される特殊な架構形式となる一方で、大地震時においても旅客の安全や列車の運行を確保できるように十分な耐震性を持たせる必要があります。 そこで、高層化に伴い柱や基礎杭に作用する力の増大に対して、部材の強度や変形特性を向上させて、発生する損傷を低減できるようにしました。また、大地震時にも建物の倒壊が生じないことを地震応答解析により詳細に確認しました(図2)。そのほかの技術的な検討や学識経験者による委員会での審議を経て、高さ31mまでに対応した設計手法として既往の設計標準を改訂しました。この設計手法により中高層の駅ビル等の設計が容易になるため、今後、JR・民鉄を含めて幅広い活用が期待されます。