8.鉄道施設の地震対策優先度判定手法の開発

 線状に延びる鉄道施設の耐震補強を限られた予算の中で効果的に行うためには、補強の優先順位や工法の選択について合理的な戦略を立てる必要があります。そこで、地震対策前後のライフサイクルコストの差をDLCCとして定義し、この指標が最大となるように、地震対策優先度を判定する手法を提案しました。DLCCは、路線全体に対して発生確率を考慮した地震波形群を予測し、動的解析により地震対策前後の構造物等の損傷確率を算出し、それを基に、復旧コスト、営業損失コストおよび耐震補強コストを算定することで評価することが出来ます。
 橋梁、盛土、電車線柱からなるモデル線区(図1)を対象に、提案手法を用いて地震対策優先順位の選定を行いました(図2)。この例では、最初に優先的に補強する箇所として、地震活動度に係わらず低じん性の橋梁が選定されました。しかし次に補強すべき箇所は地震活動度の違いによって補強箇所が異なり、活動度の高い地域では低耐力の橋梁、活動度の低い地域では電車線柱が選定されました。このように提案手法を用いることで、路線の運行条件、地震活動度、構造物条件などに応じた耐震対策順序の選択が可能となります。