1.空気ばね並列型可変減衰上下動ダンパによる制振システム

 軌道不整が比較的大きい線区を走行する車両では、車体の1〜2Hzの低周波振動(上下並進、ピッチングモードなどの車体の変形を伴わない剛体モードの振動)が上下振動乗り心地に対して大きな影響を与えています。この振動を抑制する方法として、空気ばねと並列に上下方向の可変減衰ダンパを取り付け、このダンパの減衰力を車体の振動に合わせて制御する制振システムを開発しました(図1、2)。このダンパは、車体の曲げ振動にも対応できるように、通常の鉄道車両用の油圧ダンパと比較して、比較的高い周波数領域においても優れた応答特性を持っています。
 このシステムを在来線車両に取付け走行試験を実施し、車体の振動加速度パワースペクトル密度(PSD)のピーク値を1/3〜1/5程度に低減できることを確認しました。さらに、台車直上に加えて車体中央の加速度信号を利用した制御により、車体中央で顕著にみられる曲げ振動も低減ができます(図3)。本システムにより、乗り心地評価指標であるLT値(乗心地レベル)は、台車直上で最大約3.5dB、車体中央で最大約3dB低減され、体感できるレベルの乗り心地向上効果が得られることを実証しました。なお、このシステムは、既存車両に対しても上下動ダンパ受けを設置することにより取り付けることができます。