4.新幹線高速走行に対応した電車線架設指針

 トロリ線は一定の高さで水平に架設されることが理想ですが、実際の電車線には架設誤差が含まれています。この架設誤差は、架線・パンタグラフ系の集電性能に大きく影響しますが、高速走行に対する架設誤差の許容範囲についてはこれまで十分な検討が行われていませんでした。そこで、300km/hを超える高速走行においても安定した集電を実現するための電車線の新しい基準(架設指針)を提案しました。
 架設指針の作成手順は、まず、トロリ線高さの架設誤差を表す各所の勾配や曲率などを評価項目として設定します。次に、新幹線高速走行区間におけるトロリ線高さの実測データに基づく運動シミュレーションを実施します。この結果より、集電性能(支持点の押上量やひずみ量、離線など)との関係を統計的に分析し、相関が強い評価項目を架設誤差の指標として、集電性能が良好な走行を確保するための目安値以内になるように指標の目標値を設定し、架設指針とします(図1)。架設指針における架設誤差の指標と、目標値の一例として、300km/h走行対応の値を図2に示します。同様の手法により、さらなる高速化に対応した架設指針も作成できます。架設誤差をこの指針に沿って管理することにより、新幹線高速走行において集電性能を良好に保つことができます。