5.次世代高温超電導線材を用いた小型超電導磁石

 近年性能向上が著しいイットリウム系高温超電導線材を浮上式鉄道用超電導磁石へ適用する検討を進めています。イットリウム系線材は従来のニオブチタン線材よりも高い温度で使用できるので、冷凍機のコストや重量、消費電力を低減できるメリットがあります。設計検討により、超電導磁石を50 K(ケルビン:絶対温度単位)程度で使用するとこのメリットが最も大きくなることがわかりました。
 そこで、イットリウム系線材を用いて高温超電導コイルを製作し、長時間保冷が可能な断熱容器に収納して、励磁電源と冷凍機を切り離しても1 T(テスラ:磁場単位)級の磁場を長時間にわたり維持できる小型の超電導磁石を試作しました(図1)。この超電導磁石は、コイル温度50 Kで実機超電導磁石と同じオーダーの1 Tの磁場を発生し(図2)、0.5 T以上を5時間保持することができます。また、コイル周辺に金属を配置することにより、金属の熱容量を利用して長時間保冷が可能な断熱容器を開発し、コイル温度50 K以下を9時間保持できる保冷能力(図3)があることを確認しました。