2.高靭性セメントボードを用いた高欄の補修・補強工法

 近年、RC(鉄筋コンクリート)高欄やブロック高欄の老朽化が進み、耐荷力の低下や高欄からのコンクリート片のはく落による第三者被害が課題となっています。また、列車の高速化に伴い遮音性を高めるために高欄の嵩上げが必要となる場合があります。そこで、高靭性セメントボードを用いた高欄の補修・補強工法を(株)大林組と共同で開発しました。本工法は、既設高欄を高靭性セメントボードで両面から挟み、貫通ボルトで固定するもので、既設高欄への劣化因子の浸入を抑制することができます (図1)。さらに、基部にアンカーを接続することで、高欄の耐荷力の向上が期待できます。従来の工法では既設高欄を全撤去した後に新しい高欄を設置しますが、本工法では既設高欄を利用して工事を行います。そのため、既設高欄の撤去・処分が不要となり、更に工期短縮により工事コストを削減できます。なお、嵩上げの高さは約1mまでを想定しています。
 本工法の補修・補強効果について、高靭性セメントボード本体の性能や既設高欄と一体化した場合の耐荷性能、高靭性セメントボードを複数枚用いる場合の継手構造、経年劣化により高靭性セメントボードと既設高欄の付着力が低下した場合の影響など様々な観点から確認しました。例えば、一体化した場合の耐荷性能は、風速50m/s相当の設計荷重に対して、最大耐力が約2倍あることを確認しました(図2)。
 これらの成果に基づき、「高靭性セメントボードを用いた既存鉄道高欄等の補修工法に関する設計・施工指針」を作成しました。