4.電力貯蔵装置の制御手法の最適化

 地上に設置された電力貯蔵装置は、貯蔵媒体に容量の制約があるため、その充電状態に偏りがあると、電気車の運転状態(力行・回生)に応じて電力の充放電を行うことができませんでした(図1左)。そこで、貯蔵装置を中間充電状態に制御して次の力行あるいは回生に備えることにより、電気車が要求するエネルギーを常に授受できる新制御方式を提案しました(図1右)。これにより、貯蔵媒体の容量を大きくすることなく、その動作頻度を増すことで、電気車の回生失効や電車線電圧の低下を防止することができ、貯蔵装置のエネルギー効率の向上が期待できます。なお、本制御方式は、制御ソフトの改良により、現状の電力貯蔵装置にも適用できます。
 電気車走行時の電力シミュレーションにより、本制御方式を適用した貯蔵装置が継続的に電力の供給と吸収を行えることを確認しました(図2)。さらに、電気二重層キャパシタ(寿命が長く中間充電状態での待機に適している)を用いた電力貯蔵装置を製作し(表1、図3)、鉄道総研構内で電気車を用いて走行試験を行い、電気車の力行や回生に応じた電力の充放電ができることを確認しました。その結果、従来と比較して多くの回生エネルギーを活用することで、エネルギー効率が約5%向上しました。