4.リチウム含有ゼオライトによるアルカリシリカ反応抑制材料

 コンクリートにアルカリシリカ反応(Alkali-Silica-Reaction、略称ASR)が生じると、耐荷力と耐久性が低下するため、その維持管理に多大な労力を要します(図1)。現在、種々の補修方法が開発されていますが、補修後に再び劣化が生じる事例も多く、より効果の大きいASR抑制材料が求められています。そこで、優れたASR抑制効果で知られているリチウム(Li)イオンとアルカリ吸着材(ゼオライト)を複合化したLi含有ゼオライトを簡便に合成する方法を開発し、ひび割れ注入材を試作しました。
 ASRが生じるようにしたモルタル試験体に孔を開け、その孔に開発したLi含有ゼオライト入りのASR抑制材料を注入施工して、その膨張量を測定した結果、開発したLi含有ゼオライトは、カルシウム(Ca)を含有させた既開発品よりも、膨張抑制効果が大きいことが明らかになりました(図2)。また、このLi含有ゼオライトを用いたひび割れ注入材は、0.04mm幅のひび割れにも注入できることを確認しました(図3)。
 今後、新たなASR抑制用ひび割れ注入材料として製品化を図り、ASRが生じたコンクリート構造物の維持管理に役立てていく予定です。