3.交通機関への嗜好性を考慮した交通機関選択行動モデル

 これまでの需要予測では、仕事以外の目的で都市間を移動する旅行者の交通機関分担率の推定で、全ての旅行者が各交通機関の所要時間や運賃・料金等を比較して交通機関を選択すると仮定した交通機関選択行動モデルが一般的なモデルとして適用されてきました。しかし、実際には各交通機関への嗜好性(好き・嫌い)から特定の交通機関しか利用しない旅行者も多数存在することがわかりました。そこで、幹線鉄道(新幹線・特急列車)、自動車および高速バスが競合する100〜300km程度の区間を対象に、@アンケート調査で得られた嗜好性データにより特定の交通機関しか利用しないと考えるか否かを判別し、A利用する交通機関を複数の交通機関から選択する場合には、各交通機関の所要時間や運賃・料金を比較して選択する、2段階の意思決定を表現した新しい交通機関選択行動モデルを開発しました(図1)。
 幹線鉄道、自動車および高速バスの3交通機関の競合が生じる複数の区間を対象に本モデルを検証した結果、一般的なモデルに比べて、交通機関分担率の変化を精度良く推定できることを確認しました(図2)。本モデルにより、交通機関の競合が生じる区間における新幹線や特急列車の需要動向の推定精度が向上します。