3.車軸の疲労強度を向上させた車輪はめ合い部形状

 車輪はめ合い部には、車軸のたわみにより相対的な繰返し微小すべり(フレッティング)が生じ、それに起因してき裂が発生します。従って、疲労強度向上には、フレッティングを抑制する必要があります。そこで、はめ合い部形状と疲労強度の関係を定量的に評価し、疲労強度を大幅に向上させた車輪はめ合い部形状を提案しました。
 まず、応力解析により車輪座とフィレット部の接線角度θや直径比D/d(図1)を大きくすると、はめ合い端部の応力が低下し、さらにフレッティングが低減することを明らかにしました。一方、フィレット部の応力が増すため、発生応力を疲労限以下にする必要があります。そこで、現車において変更可能な接線角度とフィレット部直径について疲労強度が最も高くなる形状(図1赤線)を提案し、実物大疲労試験によりその効果を確認しました。従来形状の試験体には破断相当のき裂が生じましたが、提案した車軸形状のものには強度上問題ない微細き裂が生じたのみでした(図2)。
 安全性向上を定量的に評価するため、実物大車軸疲労試験を模擬した解析モデルを用いて、応力解析によりき裂発生位置の応力拡大係数を求め、き裂進展評価を行いました(図3)。その結果、提案した形状の車軸は従来形状と比較して、応力拡大係数が15%以上小さく、き裂が進みにくく、安全性が向上することを確認しました。
 提案したはめ合い部形状は、在来線車軸のさらなる安全性向上、高速化による動的負荷増加に対する安全裕度の確保、車軸の軽量設計などに反映させることができます。