4.本震ならびに余震を含む地震動群の予測手法

 東北地方太平洋沖地震では、本震で振幅の大きな地震動が長時間継続しましたが、規模の大きな余震によっても各種施設に被害が発生しました。そのため、巨大地震に対する鉄道施設の安全性を評価する際には、本震時の地震動を精度よく推定するとともに、本震発生後に想定される余震を考慮することが重要になります。
 そこで、過去に発生した約180万個の地震データ(図1)を統計処理することにより、本震発生後の時間経過とともにどの程度の余震が発生するかを推定するモデルを構築しました。このモデルから、活断層による地震では本震発生後の数時間以内に比較的規模の大きな余震(本震とのマグニチュードの差が-1.0程度の地震)の発生が予想されることや、最終的に規模の大きな余震は3回程度発生することなどがわかりました。
 さらに、本震・余震で想定される地震動を高精度に予測するために、@長周期成分を広域地盤の複雑な形状を考慮した上で計算の高速化を実現するボクセル有限要素法で計算するとともに、A短周期成分を各地点の地震動特性を簡易に取り入れることができる修正統計的グリーン関数法で計算し、両者の結果を重ね合わせるハイブリッド合成法によって広域・広周期帯域の地震動を推定するシステムを開発しました(図2)。
 以上の成果を組み合わせることで、本震・余震の時系列地震動群が予測できるようになりました。また、本予測手法を兵庫県南部地震に適用し、この時発生した地震動を良好に再現できることを確認しました(図3)。