5.P波による精度の高い震央位置推定手法および効果的なS波警報手法

 より高精度で、推定時間を短縮した震央位置(震央距離、震央方位)推定手法を開発しました。
 新しい震央距離推定手法では、P波初動の解析データ長を従来の2秒から0.5秒に短縮し、加速度振幅の成長を1次式で近似した後、その傾きから震央距離を推定します(図1)。過去の地震データ10,365波形を用いて検証した結果、この手法により、震央距離の推定精度は12%向上することがわかりました(表1)。
 一方、新しい震央方位推定手法では、従来手法で使用する固定長データ(データ長1.1秒)を用いず、P波変位の最初の半波長を観測された波形に応じて自動的に切り出し、この可変長のデータに対して主成分分析を行います(図2)。過去の地震データ1,991波形を用いて検証した結果、この手法により、必要なデータ長は平均64%に短縮され、震央方向の推定精度は28%向上することがわかりました(表2)。
 さらに、複数観測点のS波規定値超過を監視するより効果の高いS波警報手法を提案しました(図3)。巨大地震の場合、これまでS波の伝播にしたがって各観測点の受け持ち範囲に順次S波警報を発していましたが、この手法では広い範囲に同時にS波警報を発します。これにより、効果的な早期S波警報が可能となります。