1.車輪ダメージを軽減する弾性構造型合成制輪子

 現在広く使用されている合成制輪子の一部では、湿潤時の摩擦係数を確保するため、ブロック形状に加工した硬質金属等が挿入されています。このような制輪子と車輪のしゅう動接触状態を調べると、応力集中と500℃以上の高温部が点在しており、この部分の熱負荷が局所的に大きくなることで、熱き裂などの車輪ダメージを引き起こしやすくなると推定されました(図1)。このため、金属ブロックに代えて適切な大きさの硬質粒子を均一に配合するとともに、車輪形状になじみやすい弾性的な構造の弾性構造型合成制輪子を開発しました(図2)。開発品は鋳鉄製造過程で廃棄される鋳砂を硬質粒子に利用しており、資源を有効に活用しています。
 開発品は踏面の温度上昇を防ぐことで熱き裂などの車輪ダメージを軽減しながら、摩擦係数を既存品よりも向上させることができます。また、現車試験により乾燥時、湿潤時ともに停止距離を既存品より10%程度短縮できることを確認しました(図3)。