5.鋼構造物き裂検知システム

 鋼構造物に発生する疲労き裂は、定期検査時に目視で発見するのが一般的ですが、き裂の発見には熟練した技術が必要なため、目視に頼らずにき裂の発生および進展を検知できる手法が望まれています。そこで、導電性塗料に着目し、実構造物に適用できるき裂検知システムを開発しました。このシステムは、き裂検知用導電性塗膜を配置したき裂検知部位と、塗膜の電気特性を測定する測定機器、さらにこれらの部位を接続するための配線部で構成されます(図1)。このき裂検知システムには、以下のような特徴があります。

@ 配線用の低抵抗導電性塗料を別途開発し、各導電性塗料を長期耐久性の期待できる複合塗膜に組み込むことで、き裂検知部位および配線部の耐久性が一般的な防食塗装仕様と同程度になりました。

A 導電性塗料を複雑な形状でも効率よく施工するため、型抜きシートやエアブラシを用いた施工方法を考案しました。これにより、実橋でき裂発生の懸念される箇所にき裂検知部位を適切に施工できます。また、システムの一工程あたりの施工時間は6時間程度です。

B 外部メモリ(任意の容量に設定可能)へのデータ蓄積技術、数百mの範囲に無線送信可能な測定機器を開発しており、き裂検知部位に近接せずに導電性塗膜の電気特性変化を確認できます。

 本システムは、営業線2鋼橋で現地試験を実施して、実用性に問題がないことを確認しました。