8.保守コストおよびリスクを低減する軌道保守工種選択モデル

 バラスト軌道におけるレール凹凸量の増加、道床の細粒化等の材料劣化の進行は、軌道変位保守の頻度を多くするとともに脱線事故や輸送障害のリスクを高めることになります。このような箇所には材料保守を含めて適切な対策(工種)を検討すべきですが、材料の交換などによる保守は軌道変位を整正する保守よりもコストが高いため、保守効果を考慮して適切な時期に材料交換するなどして、リスクを回避しながら総保守費用を減らすことが重要です。そこで、軌道変位や軸箱振動加速度等の履歴データを用いて軌道状態を評価し、適切な工種を提案するモデルを構築しました(図1)。
 本モデルでは、軌道変位を整正だけで目標レベル内に維持するのが難しく、材料交換などにより保守した方が長期的な保守コストやリスクを低減できる箇所を抽出し、各箇所のレールや道床の状態が軌道変位の悪化に与えている影響を評価します。ここで、レール状態の評価には軸箱振動加速度を用い、道床状態の評価には軌道変位保守時の改善量等のデータを用います。この評価結果に基づき、軌道変位保守(MTT、TT)、レール保守(交換、削正)、道床交換の中から適切な工種や軌道変位監視の方針を提案します。
 本モデルを実データに適用して検証し、提案された工種と実際の軌道状態とが対応することを確認しました(図2)。本モデルを用いることで、従来のような見た目や経験による判断ではなく、各箇所の優先度に応じて保守を行えるようになり、安全性や保守の経済性を向上させることができます。