1.可変減衰上下動ダンパを用いた制振制御システムの実用化

 軌道不整が比較的大きい線区を走行する車両では、上下方向の1〜2Hzの振動が乗り心地に大きな影響を与えている場合が多くみられます。そこで、車体に設置した加速度センサを用い、まくらばねと並列に取り付けた可変減衰ダンパの減衰力を制御して車体の振動を低減するシステムを実用化しました(図1)。
 実用化にあたって必要になる信頼性向上とコスト低減のため、ダンパ1本あたり1個の制御弁でフェールセーフ機能と減衰力制御機能を実現できる可変減衰上下動ダンパを開発しました。制御装置には、ダンパを制御する機能とシステム全体の異常を監視する機能を搭載しました。特に、異常検知機能の一つとして、制御用の加速度センサの信号からダンパの減衰力異常を判別するアルゴリズムを開発し、減衰力を直接測定することなくダンパ異常を検知できるようにしました。異常検知時には自動的にダンパの制御電源が切断され、通常の上下動ダンパを装備した車両として走行できます。
 走行試験の結果、本システムにより台車直上の車体上下振動は大幅に低減され、乗り心地評価指標であるLT値(乗心地レベル)は約4dB減少しました(図2)。本システムはJR九州の観光特急列車「指宿のたまて箱」に搭載されています。鉄道用の上下振動制御システムとして世界で初めて実用化されました(図3)。