4.通電下における集電系材料の摩耗およびアーク損耗現象の解明

 トロリ線およびすり板(集電系材料)の通電下のしゅう動摩耗現象およびアーク損耗現象の解明が、摩耗予測や材料開発では重要です。そこで、まず通電下のしゅう動接触状態を精緻に測定・観察できる新たな摩耗試験機を開発しました。この試験機は実際と同様にトロリ線の直線的なしゅう動の状態を再現でき、トロリ線―すり板間の接触電圧を測定することで、接触電圧から通電接点の最高温度に換算することができます(図1)。この装置を用いて通電摩耗試験を行い、推定した接点最高温度が集電系材料の融点に達する荷重条件で摩擦係数や比摩耗量が著しく変化し、3段階に摩耗形態が遷移することを明らかにしました(図2)。
 また、アーク放電による集電系材料の損耗メカニズムを解明するため、電流値およびアーク継続時間を制御し、トロリ線とすり板表面の損耗状態を観察しました。その結果、トロリ線の損耗(凹部半径)の大きさは、電流値に応じて変化し、すり板の損耗(アーク痕半径)の大きさは、電流値とアーク継続時間に応じて変化することがわかりました(図3)。これらの結果を踏まえて、集電系の摩耗現象解明や材料開発を進める予定です。