1.構造物上の地震時車両脱線被害発生確率の算出法

 連続する鉄道構造物全体の地震時車両走行性や対策効果を総合的に検討するためには、線区全体を対象とした精度の高い被害発生確率算定手法の確立が重要となります。
 本研究では、数十kmの長大な構造物を疑似的な境界を用いて複数の解析区間に分割し、複数のCPUを用いて並列処理する解析手法を構築しました(図1)。本手法により、車両の諸元、車両の速度、構造物の諸元、地震動の種類、震源の方向、各種対策工の効果等の様々なパラメータの影響を解析することができます。
 トンネル、盛土、高架橋からなる延長20kmのモデル線区に対し被害発生確率を求めた例では(図2)、トンネル内や盛土上では大規模地震に対しても車両の脱線は生じ難い結果となっていること、構造物群上に架道橋等の弱点箇所が存在すること等が分ります。また本手法による解析結果に基づき、被害発生確率を、簡易な関数で近似的に表す手法についても併せて提案しました。