6.積雪底面流出量の簡易推定手法

 融雪期に発生する全層雪崩は積雪底面へ浸透する融雪水が影響を及ぼすため、その発生危険度を評価するためには、積雪底面流出量を把握することが重要です。積雪底面流出量は気温のみから簡易に推定する方法がありますが、得られる値が日単位であり、雪崩の危険性を評価するうえでは課題がありました。一方、時間単位で積雪底面流出量を推定する方法は、入力要素が多く、容易に使用することが困難でした。そこで、既往の推定方法に替わるものとして、簡易に積雪底面流出量を推定する手法を提案しました。
 積雪底面流出量を短い時間間隔で推定するためには、その入力要素である積雪表面融雪量を精度良く求めることに加えて、融雪水が浸透する際の時間遅れを考慮する必要があります。積雪表面融雪量については、融雪観測の結果を熱収支モデルへ取り込むことにより、アメダス観測点等から入手可能な気温、降水量、風速、日照時間の4要素から推定できるようになりました。ここで得られた積雪表面融雪量を入力値とする浸透速度の算出手法を作成し、これを積雪底面流出量の推定過程に取り込むことにより、融雪水の遅れ時間が再現できるようになりました(図1)。この結果、融雪水が浸透する際の遅れ時間を考慮しない場合と比べて、積雪底面流出量の推定値の標準誤差が約半分に低減されました(図2)。