8.台車旋回性能の評価法

 曲線走行中には台車が曲線に沿って旋回し、ボギー角(車体と台車間の相対ヨー回転角度)が生じて、まくらばねやダンパが台車の旋回に抵抗する力を発生します。この台車旋回抵抗モーメントは、曲線通過時の横圧発生の一因になるため、車両の曲線通過性能評価にはその正確な把握が重要です。従来は、空気ばねやダンパなど単体試験の結果を計算上で重ね合わせて台車旋回抵抗モーメントを求めていました。
 そこで、実車での現象をより正確に再現させるために、空気ばねやダンパを台車に組み込み、かつ車体荷重を掛けた実装状態で台車旋回抵抗モーメントを測定することのできる台車旋回性能試験装置(図1)を開発しました。特に本装置では、旋回抵抗モーメントと同時に旋回時の台車挙動の理解に重要な輪重や横圧、台車変位や3方向の空気ばね力を同時に計測できる他、複数の旋回モードを有し、台車慣性半径の測定も可能となります。また、ヨーロッパの鉄道車両試験規格に対応した試験を実施できる仕様としています。
 実車両の台車旋回抵抗モーメントを実測し、ヒステリシス成分やボギー角が大きい時の非線形性などを確認しました(図2)。また、空気ばねパンク時やヨーダンパ装着時の旋回抵抗モーメントも測定しました。本試験で得られた結果をシミュレーションモデルや横圧推定式に適用することで、より実態に近い旋回抵抗モデルを構築することが可能となり、曲線通過性能の評価精度の向上に寄与します。