10.車輪踏面の微小凹凸による曲線走行時の横圧低減手法

 車輪踏面の円周方向には、削正痕などによる微小な凹凸(高さ数μm〜数十μm程度)があり、車輪とレール間の接触面が楕円形状とならない場合があります。この時のクリープ力は微小凹凸によって変化すると考えられ、車両の運動特性に影響を及ぼす可能性があります。
 車輪踏面の微小凹凸が、車輪とレール間に作用するクリープ力特性に及ぼす影響を調べるため、接触面に異なる高さ・ピッチの微小凹凸を設けた小型試験片を製作し、接線力測定実験によりクリープ力を比較しました。その結果、接触面に微小凹凸がある方が接触面積は小さくなるため平滑な形状よりクリープ力が小さくなること、特に、まくら木方向に作用する横クリープ力を低減させる適切な凹凸形状があることが分かりました。この知見を応用し、車輪削正時に踏面の反フランジ側に微小凹凸を設け、曲線走行時の横圧を低減する手法を提案しました(図1)。その結果、本手法は、車輪とレール間の摩擦係数が高く脱線に対して厳しい条件において、円曲線で生じる定常的な横圧を通常の車輪踏面より10%程度低減させる(安全の余裕を大きくする)効果があることが分かりました(図2)。