5.寿命延伸した新幹線用焼結合金すり板の開発

 新幹線のパンタグラフすり板には潤滑性と耐摩耗性が求められています。近年のすり板開発では、潤滑性向上のためにすり板素地の鉄粉を硫化処理する方法がありますが、本開発では従来素地材料に用いてきた鉄粉に換え、自己潤滑性を持つ硫化マンガン快削鉄粉を用いました。硫化マンガン快削鉄粉および従来の鉄粉を焼結した試験片を試作し定置試験で比較した結果、硫化マンガン快削鉄粉の試験片は鉄粉の試験片に比べて模擬トロリ線の摩耗率が約40%減少し、素地の潤滑性が向上することを確認しました(図1)。なお、素地材料の変更に伴い製造工程の一部省略も可能になりました。
 素地の潤滑性向上によりすり板の摩耗量増加が懸念されたため、その耐摩耗性向上に有効な硬質粒子を従来より増加させて新たな鉄系焼結合金すり板を開発しました。開発すり板の特性を定置試験で確認した結果、模擬トロリ線の摩耗率は現用すり板と同程度、すり板の摩耗率は現用材より30〜40%減少しました(図2)。開発すり板を実車に搭載し、トロリ線への影響とすり板の耐摩耗性を現用すり板と比較した結果、トロリ線の摩耗率は同程度、すり板の摩耗率は5〜7%減少しました(図3)。