宮地 由芽子

-先輩職員インタビュー-

プロフィール
宮地 由芽子
安全心理研究室 室長
1994年入社

ヒューマンエラーの分析などを通じて
鉄道の安全に貢献する

私たちの研究室では、鉄道事業者の安全マネジメントの実施や安全風土の醸成を支援するための研究開発に携わっています。

例えば、10年ぐらい前になりますが、ヒューマンエラーに起因する事故やトラブルの防止対策を検討するための「鉄道総研式ヒューマンファクター分析法」を開発しました。この手法は、エラーの発生までの経緯をきちんと整理して、個々の背景要因を分析するための方法です。
また、十分に分析するためには、その前に、関係者から事故やトラブルの発生状況や関係者のその時の心理といった背景要因に関する情報を聞き取ることが必要です。その際、現場の管理者の方が聞き取りを行うのですが、聞き取り方によって得られる情報の内容が変わってきます。そこで、心理学の応用技術をもとに、事故やトラブルの背景要因の聞き取り調査手法も開発しています。

研究成果を鉄道事業者に
現場で活用することで新たな研究のシーズが生まれる

開発した手法などを解説するマニュアルを作ったり、導入のための効果的な訓練プログラムを作成したりしてきました。研究成果を鉄道事業者に効果的に使っていただくために、どういう説明をしたらわかりやすくなるのかといった指導方法についても、研究テーマの一つです。
研究成果を使っていただけると、やりがいを感じます。鉄道総研で働くことの魅力は、研究成果を活かす場があることだと思います。学会での発表だけではなく、実際の使用者に実際に会ってお話させていただくと、直接反応を得ることができます。そうすると、取り組むべき根本的な課題が新たに見つかることもあり、それが次の研究の種になったりします。新しい提案をしたら終わりというのではなく、運用場面の支援の実態を把握することで新しい研究テーマの提案につながっています。

内外との対話のための
風通しのよさが魅力

特に私たちの分野は「依頼」を受ける前に「相談」を受け、それから具体的な解決方法を考えて提案するという形が多いので、鉄道事業者との「対話」がとても重要です。相談という形でなくても、ふだんの何気ない会話から研究のヒントをいただけることが多く、いろいろな方からお話をうかがう機会が得られることは、とても魅力的です。
学生の方と話をすると「研究者」というと一人でコツコツ取り組むイメージを持っている人が多いように思いますが、実際の研究活動でもチームを組んで意見を出し合って、より良いものを提案しています。同じ専門分野の人だけではなく、専門分野が異なる人の意見も参考になります。その意味で、鉄道総研は、いろいろな分野の人が集まっていますし、かつ互いに顔が見える規模の組織なので、風通しがいいのではないかと思います。研究成果が使われることの社会的インパクトの大きさと風通しのいい組織で働くことの魅力が両立しているところが、鉄道総研で働くことの良さだと思います。

コラム:女性研究室長について

2011年に、鉄道総研で初の女性研究室長になりました。鉄道総研には、出産・育児を経て活躍している女性たちもたくさんいます。何より、男性研究者の中にも、いわゆる「イクメン」がいるので、女性だけが特別というわけではなく、誰もが仕事とプライベートを両立させていける環境や文化が根付いていると思います。
研究室長として心がけていることは、若手の人が自分から「こんなテーマをやりたい」という提案や「こうした方が良いと思う」という意見をしやすい環境を作ることです。これは、特に上司と部下という関係によるものではなく、同じ研究者という仲間として、私自身も若手の人からの意見で気づかされる経験が多々ありますので、お互いにチームで研究に取り組んでいるメリットだと思っています。また、外部との「対話」の機会を若手の人にも持ってもらえるよう、働きかけています。