布川 修
-先輩職員インタビュー-
プロフィール
布川 修
地盤防災研究室 研究室長
1997年入社
降雨による斜面の崩壊メカニズムを解明し
運転規制の見直しに貢献
学生時代、地震時の液状化をテーマに研究。実際の地盤に近い模型を作って実験を重ね、液状化対策について検討していました。このときの経験から鉄道や道路などを守る仕事に興味を抱き、当研究所に入社しました。以来、地盤防災研究室に在籍しています。
地盤防災研究室では、降雨時における斜面崩壊と河川増水による災害をテーマに研究を進めています。私は前者の斜面崩壊による災害を担当。当研究所には1時間あたり300mmまでの雨を人工的に降らせることができる大型降雨実験施設があり、斜面の模型に雨を降らせて地盤の変化を観察し、崩壊のメカニズムを検討しています。鉄道事業者は降雨時の運転規制を設けており、一定の降雨量を超えると運転をストップします。一方で、規制を解除し運転を再開するタイミングを決めることも重要であり、降雨による斜面災害の研究を通じて、より適切な規制解除の基準を導いていくことなどが研究の目的となります。
また、斜面災害の対策に関しては、コンクリート構造物で斜面を被覆する場合があり、この対策の効果に関してはある程度の答えが出ています。今後は、近年多く観測されている短時間に集中的に降る雨に対してもこうした対策で効果があるかどうかを、検証していく予定です。
理論では説明できない現象も珍しくない。
だからこそ、解明のプロセスにやりがいがある。
当研究所に入社して20年が経ちますが、今も降雨による斜面災害の研究に携わっていると、わからないことが多々出てきます。研究者としては、降雨実験により斜面が崩壊するメカニズムを解明していくプロセスそのものにやりがいを感じます。実際、地盤には「内部構造がわかりづらい」という特徴があります。内部構造が把握できたとしても、降雨により理論では説明できない現象が起こることも珍しくありません。私たちが向き合うのは降雨による斜面災害という自然界の現象であり、だからこそ、「なぜ、このような現象が起こるのか」と感じるようなケースが多いです。地形など環境の影響もありますし、様々な条件を考慮して今後も検討を進めていきたいと思っています。
もうひとつ、私たち研究職には、研究の成果を鉄道という対象物に活かせるという醍醐味もあります。降雨による斜面災害が発生した際に鉄道事業者から要請があれば、現地に赴き調査を行い、現地で対策方法など技術的な指導をします。現地での経験を日々の研究に活かすことも多く、この点も鉄道総研ならではの特徴だと思います。
現在は研究室長を務めています。今は室員一人ひとりの研究をバックアップしながら、自分なりの研究室の運営方法を取得・確立していきたいと考えています。
コラム:若手研究室長について
風通しの良い環境を築き、若手室員の成長を支えたい。
2016年4月、地盤防災研究室の研究室長に就任し、研究管理が主要な業務となりました。室員一人ひとりとコミュニケーションを図りながら研究の進捗状況を把握し、必要に応じて指導しています。また、災害発生時には現地に研究室の職員を派遣するなど、災害対応も室長の大切な仕事のひとつです。2016年度は降雨による災害が多く発生し、鉄道事業者からの技術的な相談も多くありました。私たちを信頼して頂いての要請ですから、すぐさま対応するようにしています。まだ経験の浅い若手職員にとって、現地対応は大切な学びの場でもあります。災害対応時は必ず若手職員に同行してもらい、災害の規模や状況などを一緒に確認してもらっています。
かつて、私が入社間もない頃、経験豊富な先輩職員とのやりとりを通じて社会人としてのマナーを学ばせていただきました。研究室にはJR各社から出向者が来ており、彼らから教わることも多かったです。誰もが発言しやすい風通しの良い環境を築いていき、すべての室員にのびのびと、そして意欲を持って研究に臨んでもらえたらと願っています。