山田 聖治

-先輩職員インタビュー-

より安全に、快適な駅舎を築くため 耐震性能評価や耐震補強法の開発に取り組む

プロフィール
山田 聖治
建築研究室 研究室長
2001年入社

鉄道駅の構造安全性を
どのようにして確保していくか

入所後、建築研究室に在籍しました。その後、地震応答制御研究室への兼務を経て、2017年から地震応答制御研究室の室長、2018年10月から建築研究室の室長をしています。

建築研究室の使命の一つは、鉄道駅の構造安全性を担保することです。1階にホーム、2階にコンコースがある橋上駅は建築基準法に則って建設しますが、商業ビルや集合住宅など一般建築物にはない構造的特徴があります。例えば、通常、一般建築物では基礎梁を設けますが、橋上駅の場合、鉄道が通るため基礎梁の施工が難しく、設けないことが多くあります。そのため、このような構造的特徴を考慮しつつ、構造安全性を考えた設計を行う必要があります。また橋上駅では、列車通過や旅客流動のために、耐震壁などの構造部材を入れることが困難です。そこで、耐震性能を高める補強方法などの研究を進めています。

近年では、天井の耐震安全性に関して注目が高まっており、建築基準法の改正を経て天井の耐震設計に関する新たな技術基準が設けられました。しかしながら、鉄道駅特有の条件から、この技術基準をそのまま適用できない場合もあります。そのため、技術基準と鉄道駅の特徴をすり合わせながら、鉄道駅天井の耐震性能をいかに確保していくかが、大きな課題となっています。また、やはり鉄道駅ならではの課題である列車騒音対策も必要のため、これら2つの性能を兼ね備えた吊り天井の開発を行っています。

熊本地震で損壊が少なかった旅客上家
現場では、時に想像を上回る事象が起こる

2016年に発生した熊本地震を含め、これまで経験した地震では、地平に建てられた旅客上家で損壊が少ない一方、高架橋に建てられた旅客上家では被害が出る傾向があります。では、なぜ簡素な構造の地平上家で損壊が少なかったのか。地震の揺れが地面から旅客上家に伝わる時、私たちの推測と異なる揺れ方をしていたのではないか。地平の上家と、高架橋上の上家では違う動きをするのではないか。建築研究室では、鉄道地震工学センターと協力し、このような着眼点からも研究を進めています。

研究者として最も大きなやりがいを感じるのは、現象を解明し、実用的な設計法や補強法の研究・開発などに携わった時です。建築研究室では、構造安全性だけでなく、快適性などを向上させる工法などの開発にも取り組んでおり、自らの成果が採用された時には、何物にも代えがたい喜びがありました。

また、鉄道全体の耐震性能向上を目指すために、私を含めた多くの技術者で建築や土木に関する技術基準を指針や標準という形でまとめています。実務において、土木構造物と建築物が複雑に混在する鉄道の場合、それぞれの基準類の適用範囲などの捉え方が難しく、鉄道事業者からお問い合わせをいただくことがあります。「鉄道建築の構造や鉄道土木との境界領域なら、鉄道総研の山田に聞けばいい」といった身に余る評価をいただくこともあり、これもまた日々の仕事に取り組む原動力となっています。

コラム:鉄道における建築と土木の境界<耐震基準>について

建築と土木の境界をシームレスに
より安全かつ快適な鉄道駅が実現できる

以前に所属していた鉄道地震工学研究センターでは、土木構造物と建築物、車両、電車線構造物など鉄道における様々な耐震性を横断的に取り扱っています。

建築と土木。一見似ていますが、準拠法令や設計体系に違いがあり、技術分野間の境界となっています。一般的に、建築物と土木構造物は独立して建設されることが多いので、この境界があっても問題はありません。これが鉄道駅の場合、土木の上下に建築物がある場合が多くあります。例えば、高架駅では、高架橋は土木、高架橋上の上家や売店は建築で設計・施工しています。そして、鉄道構造物においても、これまで、建築と土木をそれぞれ別に扱ってきました。しかしながら、これからは建築物と土木構造物の相互作用を考えるべきではないか。つまり、建築と土木の境界をシームレスに扱うべきではないか——。鉄道総研ではここ10年ほど、この考えに基づいた研究・開発を進めています。既存構造物については、まず建築と土木に関する法令や基準を調査・把握し、技術的な検討を続けてきました。これにより、「この設計年代の土木基準による設計であれば、現行の建築法規の耐震性能を満足できる」といった助言ができるようになりました。

また、新設構造物の耐震設計に関しても、建築と土木の境界をシームレスに扱いたいと考えています。高架橋上の建築物の場合、高架橋の影響から、地上に建てられた場合に比べて大きく揺れる傾向がありますが、現状では一体的に解析することが容易ではありません。そのため、土木の知見を活かした建築の耐震性能評価法の構築が必要と感じています。いつか、建築と土木の整合性を考えた“シームレスな耐震基準”を構築することができたら嬉しいと思います。

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