ブレーキディスクを任意の力で挟み,ブレーキ力を得る装置をキャリパと呼びます。新幹線で用いられている軽量でコンパクトな既存の油圧式キャリパと互換性を持ち,空油圧変換装置(増圧シリンダ)を用いないシンプルでメンテナンス性に優れた空圧式フローティングキャリパを開発しました(図1)。
本装置では,テコや歯車といった仕組みを用いず大きな力を直接伝えることができる「楕円形ダイヤフラム押付機構」を作動アクチュエータとして用いています。ダイヤフラムは空気圧を押し付け力に直接変換できる単純な機構で,薄くて気密性の高いゴム膜を用いるため製作形状の自由度が大きいという特徴があります。そのため,限られたスペースを有効に利用できる楕円形状にすることで,油圧式キャリパと同等の大きさに構成することができました(図2)。
ブレーキ試験機による試験により,開発した空圧式フローティングキャリパが油圧式キャリパと同等のブレーキ性能を有し(図3),ダイヤフラム温度の上昇も,ブレーキライニングとの間に配置した断熱ピストンなどによりダイヤフラム寿命へ悪影響を及ぼさない温度に抑制できることを確認しました(図4)。
今後は,更なる新幹線の性能向上に適用する基礎ブレーキ装置として,ブレーキ力を1.3倍に増強した「高負荷型空圧式フローティングキャリパ」の開発に着手するとともに,実用化に向けた最終段階として耐久性の評価や保守性などを検証していく予定です。