第135回 鉄道総研月例発表会:構造物技術の研究開発

鉄道総研における最近の構造物技術の研究開発


構造物技術研究部 部長 村田 修

 構造物技術研究部では、(1)技術基準の整備、(2)構造物の維持・管理、(3)建設費節減、(4)快適な駅空間の創造の四つを研究開発の柱として活動を行っている。今回の発表では、それぞれ四つの柱のうちから最近の研究開発状況を報告するとともに、今後の展望を解説する。


鉄筋コンクリートラーメン高架橋接合部の定着に関する研究


構造物技術研究部(コンクリート構造) 副主任研究員 柏原 茂

 1柱1杭式の鉄筋コンクリートラーメン高架橋の部材接合部は、鉄筋が縦横に配置されており、特に接合部内に定着する軸方向鉄筋にフックを設ける場合、鉄筋の組立やコンクリートの打設が困難になることが多い。本研究では、ラーメン高架橋の地中梁・柱・杭の接合部を模した縮小試験体の交番載荷試験から、杭部材の軸方向鉄筋の定着長および定着方式が軸方向鉄筋の定着性能に与える影響について報告する。



長期暴露した鉄筋コンクリート梁の劣化性状


構造物技術研究部(コンクリート構造) 副主任研究員 大屋戸 理明

 鉄道コンクリート構造物は、海岸付近や山岳地帯にも多く建設され、厳しい環境下に置かれているものも少なくない。また、一部のコンクリート構造物は、材料、設計、施工に起因する耐久性の問題を抱えているのも事実である。本報告では、大量の塩分の導入と12年間の長期暴露により、相当程度鉄筋を腐食させたRC部材に対し静的曲げ載荷試験を実施し、鉄筋やコンクリートの劣化が曲げ性能に与える影響について報告する。



エネルギー吸収機能を有する落橋防止装置の開発


構造物技術研究部(鋼・複合構造) 研究員 高山 智宏

 兵庫県南部地震において鋼橋の被害は支承部に集中した。現在、各鉄道事業者において様々な落橋防止対策が講じられているが、桁座余裕が少なく装置の大きさに制約があるなど、その設置環境から対策工事の困難な箇所が多く残されている。そこで、ダウンサイズ化され、さらに地震力作用時に桁と桁移動制限壁との衝突力を低減させるFRPと繊維積層ゴムを併用させた新タイプの落橋防止用緩衝装置を考案し、解析によりその設置効果を検証した。



地盤変位を考慮した杭基礎の載荷実験


構造物技術研究部(基礎・土構造) 研究員 滝沢 聡

 これまで多くの杭頭載荷実験が行われ、基礎の設計に必要な地盤ばねの特性や荷重分担率など多数の知見が得られている。これは、上部工からの慣性力が基礎へ伝達される状態を想定したものである。一方、軟弱地盤中の基礎の耐震設計は、地盤変位を考慮することになっている。そのため、これまで得られた知見が、地盤変位を考慮した状態でも同様に適用できるか検討が必要である。そこで、基礎的資料を得るために地盤変位を作用させた杭の模型載荷実験を行った。その実験内容と結果を紹介する。



掘削時における周辺地盤の変形予測に関する研究


構造物技術研究部(基礎・土構造) 副主任研究員 小島 謙一

 開削工法などの掘削工事では、周辺地盤や構造物に及ぼす変形が大きな問題となる場合がある。しかし、設計時や施工時における検討手法としては複雑な手法が多く、少ない情報から容易に周辺地盤の変形を予測する手法が必要とされる。本研究は、有限要素解析と現場で計測されたデータから設計計算に用いるパラメータ(N値や土留め壁の剛性など)を用いて、掘削時の周辺地盤変形を簡便に予測する新しい手法の提案を行うものである。



剛塑性有限要素法を用いたトンネル切羽の安定に関する研究


構造物技術研究部(トンネル) 研究室長 小西 真治

 都市部地下鉄道建設に経済的な山岳工法を適用するには、切羽(掘削中の先端部分)安定評価法が必要となる。切羽崩壊のような極限状態は、塑性に着目した解析が有効である。塑性論の上界定理を用いた極限解析法を有限要素法で定式化し連続体に適用したのが剛塑性有限要素法である。切羽崩壊模型実験についてこの手法を用いたシミュレーション解析を行い妥当性を検証した。また、感度解析を行い切羽安定に与える各要因を整理したので報告する。



制震工法による橋上駅の耐震補強


構造物技術研究部(建築) 主任研究員 武居 泰

 橋上駅などの線路上空利用建物を対象として、低降伏点鋼を用いた制震ブレースによる耐震補強工法を開発した。地震時の作用エネルギーを制震ブレースの履歴エネルギーで吸収し既存架構の損傷を軽減させるもので、ホーム上の柱上部に方杖状に配置するため、列車の運行や旅客の流動を支障しない。各種実験や数値解析を行い耐震性能向上のために有効であることを確認し、実設計時の指針となる補強設計マニュアルを作成した。

              
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