第154回 鉄道総研月例発表会:最近の電力技術

鉄道総研における電力技術の研究開発


電力技術研究部 部長 中道 好信

 電気車に安定した電力を供給するため、電車線・き電(電力供給)の各分野で各種の研究開発を実施している。機械振動系である電車線の波動伝播に関する基礎研究から、電車線の保守軽減を支援するための研究、安定した電車線構造、信頼性の高い保護システム、省エネルギーの観点からの電力貯蔵に関する研究など、最近の研究開発の成果や開発状況について紹介・概観する。


架線波動の伝播特性


鉄道力学研究部(集電力学) 研究室長 網干 光雄

 架線・パンタグラフ系では、パンタグラフ走行に伴って発生したトロリ線波動が架線内を複雑に伝播し、これが架線・パンタグラフ間の接触力変動に対する大きな要因の一つとなっている。本発表では、支持点やハンガ点での波動反射特性や線条の波動減衰特性など、架線波動の伝播特性に関する最近の解析結果をまとめて示すとともに、接触性能の良好な架線条件等について述べる。



新幹線わたり線構成の速度特性


電力技術研究部(集電管理) 主任研究員 久須美 俊一

 新幹線の高速化に際し、交差式わたり線箇所における集電特性を検討した。本発表では、現行のわたり線構成(保守基準)の制定根拠の調査結果と、今回開発した交差式わたり線用シミュレーションプログラムの概要、およびパンタグラフ通過時の速度特性を報告する。また、現在保守上問題となっているわたり線箇所の本線トロリ線の偏摩耗を解決するため、現行保守基準の見直しが可能かどうかについても検討した。



補助線を有するき電ちょう架式電車線の開発


電力技術研究部(電車線構造) 研究員 濱田 貴弘

 き電ちょう架式電車線は部品点数が少ないため、メンテナンスが省力化できる点から最近広く導入されている架線方式である。しかしながら、摩耗やアーク・ジュール熱によるトロリ線の断線を防止するという点では、従来の電車線と同じ管理が要求される。そこで、部品点数が少ないことに加えトロリ線が断線しにくい構造をした補助線を有するき電ちょう架式電車線の開発を行い、速度150km/hまでの集電性能を確認した。



剛体電車線の離線低減方法


電力技術研究部(電車線構造) 副主任研究員 清水 政利

 地下鉄等で採用されている剛体電車線は、設備の信頼性が高く省メンテナンス性が優れているため、在来線のトンネル区間等に対しても適用が期待されている。このため、列車速度向上の妨げとなる離線(電車線とパンタグラフの非接触状態)の発生原因とその低減方法を検討し、トロリ線しゅう動面の微少な凹凸を除去すれば、速度160km/hまで離線率をほぼ0%に低減できることを走行実験により確認した。



デッドセクションのトロリ線ひずみ軽減策


電力技術研究部(集電管理) 主任研究員 菅原 淳

 JR在来線の交流電化区間では、電源の位相が異なる箇所の区分をデッドセクションで行っているが、その入口ではパンタグラフ通過時にトロリ線に発生する曲げひずみが大きく、疲労によるトロリ線破断の懸念から速度向上の妨げとなることがある。本研究では、セクション両端のトロリ線と絶縁体の接続部に生じるしゅう動面高低差に着目し、これを緩和する方法を考案し試験を行ったところ、トロリ線ひずみ軽減効果が確認できた。



直流変電所における地絡保護システムの開発


電力技術研究部(き電) 副主任研究員 川原 敬治

 直流変電所では直流母線地絡を保護するため、直流高圧接地継電器(64P)が設備されている。しかし、母線地絡や外線地絡時に隣接する複数変電所の64Pが動作して多大な運転支障を引き起こす場合がある。そこで複数変電所の64P同時動作の防止対策として、レール・変電所接地マット間に放電ギャップを挿入し、さらに故障変電所の確定や外線・構内地絡の判別に帰線のΔIを利用する方法を考案したので、その概要とJR東西線で実施した試験結果について報告する。



縮小モデルによる直流電鉄用電力貯蔵装置の検証試験


電力技術研究部(き電) 研究室長 長谷 伸一

 近年、電気自動車用の駆動電源用として電力貯蔵媒体の開発は目覚ましいものがある。その中でも、急速充放電が可能で、長寿命、省メンテナンス、低公害、高効率な電力貯蔵媒体として電気二重層キャパシタの大容量化が急速に進展してきている。この電気二重層キャパシタを貯蔵媒体とした直流電気鉄道用電力貯蔵システムの縮小モデルを試作し、その基本特性を確認したので、その結果を報告する。


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