車両構造技術研究部 部長 手塚 和彦
車両構造技術研究部では車両のダイナミクスや振動制御、新しい走り装置の開発、車両部品の強度評価、衝突安全性、車内騒音などに幅広く取り組んでいる。車両制御技術研究部では電気車の駆動制御、空転再粘着制御、ブレーキ制御などのほか、新しい技術として電力リサイクル車両や燃料電池の開発に取り組んでいる。
ここでは、車両関係の研究開発の中から、最近の動向を幾つか紹介する。
車両構造技術研究部(車両振動) 副主任研究員 富岡 隆弘
最近の検討により、乗り心地の観点から重要な車体弾性振動(車体上下曲げ振動)に対する車体と台車間の前後系の結合要素(牽引リンクやヨーダンパの緩衝ゴム剛性や取付け高さなど)の影響が大きいことが明らかになり、台車との相互作用を利用した車体上下曲げ振動低減法の可能性が示されている。本発表ではこの新しい振動低減法のメカニズムと有効性について、新幹線による現車試験の結果も交えて紹介する。
車両構造技術研究部(車両運動) 研究員 飯田 忠史
走行安全性、走行安定性および振動乗心地を定量的に予測するためには、大変位に対する台車の動特性を把握する必要がある。そこで、新車両試験台において一両モデルによる試験台試験を実施し、質量特性を既知として台車ばね系諸元のパラメータ同定を行った。本線を走行した場合に測定された車体の振動加速度と、同定結果を用いたシミュレーション結果を比較し、両者が良く一致することを確認した。
車両構造技術研究部(走り装置) 副主任研究員 石毛 真
独立回転車輪方式の新在直通軌間可変台車用に開発した軸受は、複列円錐ころ軸受と深溝玉軸受の組合せで構成されている。車輪および車輪一体型主電動機の回転子を内側から回転支持するために外輪回転で使用すること、期間変換動作を可能とするために軸受径が大きく、高速走行時の dn 値が大きいことが特徴である。独立車輪台車用軸受の構成、仕様および耐久性、高速走行性、潤滑寿命の各種性能と主に潤滑寿命向上策について発表する。
車両制御技術研究部(ブレーキ制御) 研究員 長澤 新
路面用合成制輪子使用時におけるかじり(制輪子摺動面に金属の塊が形成される現象)について、車輪異常摩耗の原因とも言われ、車両保守上の問題になっている。かじりに関する研究は過去にも行われ一定の知見が示されているが、近年発生しているかじりについては説明ができない点も多い。そこで、ベンチ試験による再現試験や、かじり発生時の金属の塊の成分分析などを行い、かじりの発生メカニズムに関する調査を行った。
車両制御技術研究部(駆動制御) 副主任研究員 福田 典子
鉄道車両では、一つの部品の故障が線区全体の運行や安全に影響する場合があるため、使用する電子部品の高信頼性を確保することは極めて重要である。現在、車両には多くの電子部品が使用されているが、一般民生品に比べて使用条件・環境条件が大きく異なるため、寿命評価方法は確立されていない。今回、信頼性上重要な部品で、集積度の高いプラスチックIC にういて、加速寿命試験結果をもとに寿命推定を行ったので報告する。
車両制御技術研究部(動力システム) 研究員 川村 淳也
近年、地球環境問題に対する意識の高まりから、鉄道車両においても省エネルギー化への取組みが進めらており、主電動機を選択する基準の一つとして消費電力量が重要である。車両走行時における主電動機の消費電力は、主電動機の電動機方式と冷却方式によって異なる。そこで、電動機方式及び冷却方式の異なる在来線用主電動機において走行シミュレーションを行い、消費電力量を算出し比較検討を行った。
車両制御技術研究部(駆動制御) 研究室長 秦 広
最近、車両にエネルギーを蓄積する装置を搭載して、回生ブレーキの失効を防止する技術開発を進めている。これにより架線を通しての電流のやりとりが少なくなり、ジュール損が減るメリットもある。蓄エネデバイスとしてリチウムイオン電池とフライホイールをそれぞれ試作した。リチウムイオン電池はエネルギー蓄積密度が大きいので、トラムレベルの車両では、駅で充電した電力のみで走行する架線レスシステムを構築出来る可能性がある。これらについて紹介する。
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