第173回 鉄道総研月例発表会:最近の軌道技術

最近の軌道技術に関する研究開発


軌道技術研究部 部長 高井 秀之

 「軌道保守は経験技術である。」とは古くから言われているフレーズである。確かに軌道保守担当者は、軌道の挙動が軌道構造、運転条件、場所、季節などによって千差万別であるという現実に直面している。しかし、近年の解析技術の高度化によって、これまで偶然として受け止められていた現象のメカニズムが工学的に解明されつつある。急速に進みつつある軌道技術の経験技術からの脱却を目指す取組みについて概説する。


新幹線の高速化に向けた軌道管理手法


軌道技術研究部(軌道管理) 主任研究員 矢澤 英治

 近年、300km/hを超える速度域で新幹線の営業運転を実現する計画が進められている。これらは乗り心地を向上し、環境等にも配慮しながら速度向上しようという計画である。しかし、軌道の管理は現状でも非常に高精度であり、速度向上実現のためには新たな手法が求められる。今回は、このような高速走行を実現する軌道管理の基礎となる最近の知見と、近い将来の軌道管理手法のイメージを紹介する。



新しいガス圧接法を用いたレール溶接


軌道技術研究部(レール溶接) 副主任研究員 山本 隆一

 ガス圧接法は、レールの接合に広く適用されている。しかしながら、現行ガス圧接システムで燃料ガスとして用いられているアセチレンは、燃焼速度が非常に速く取扱いに慎重さが要求され、また、酸素との燃焼反応で多量の炭酸ガスが発生する。このような状況の中、アセチレン代替ガスとして、水を電気分解して得られる酸素水素混合ガスに注目し、レールガス圧接への適用性を検討してきた。今回は、その取り組みについて報告する。



横圧を考慮したロングレールの座屈安定性評価


軌道技術研究部(軌道構造) 主任研究員 柳川 秀明

 ロングレールの適用は直線区間だけではなく半径600m未満の急曲線区間等へ拡大されており、急曲線部では車両横圧の増加が想定される。本発表では、車両横圧が軌道の座屈安定性に及ぼす影響を明らかにするため、輪重と横圧を想定して鉛直荷重および水平荷重を載荷した模型軌道座屈試験を実施し、さらに有限要素法を用いた座屈解析法の提案を行ない、実際の軌道を想定して横圧を考慮した座屈解析を行った結果について紹介する。



レール継目部の応力解析と寿命評価


軌道技術研究部(軌道構造) 研究員 及川 祐也

 レール更換周期の延伸を目的として、定尺レールの疲労寿命推定精度を向上させるためには、レール継目部に発生する応力を明らかにする必要がある。そこで、現地試験、載荷試験および有限要素解析によりレール継目部の発生応力を求めた。また、経年レール継目部の疲労試験により、発生応力と破壊までの繰り返し数の関係を明らかにし、それらの結果を用いて、レール継目部の寿命評価を行った。



レール継目部動的挙動の実測と沈下予測


鉄道力学研究部(軌道力学) 研究員 鈴木 貴洋

 レール継目部は軌道弱点箇所であり、継目部における車両・軌道の挙動を把握することは重要である。本研究では、100Hzまでの輪重変動が、継目落ち形状に依存するとともに速度に対して単調増加しないことを車上輪重測定結果から明らかにし、この測定結果とレール継目部動的解析モデルの計算結果が概ね一致することを確認した。さらに、このモデルを用いて、遊間量や継目落ち形状と道床沈下進みとの関係を検討した。



列車荷重を受ける軟弱路盤の変状メカニズム


軌道技術研究部(軌道・路盤) 副主任研究員 村本 勝己

 路盤軟弱箇所では、噴泥や路盤陥没などの路盤変状が発生するリスクが高いことは周知の事実である。しかし、過去に説明されてきた軟弱路盤の変状メカニズムには力学的背景に曖昧な点が多く、合理的な対策法には直接結びつきにくかった。そこで、軟弱路盤の変状メカニズムを様々な要素実験や現地調査を基に解明し、検討中の合理的な路盤変状対策の基本方針について説明する。



繰返し荷重を受ける道床バラストの沈下特性


軌道技術研究部(軌道・路盤) 研究室長 関根 悦夫

 道床バラストは、繰返し作用する列車荷重によって塑性沈下を生じる。その要因は様々あるが、ここでは、道床バラストと路盤に焦点を当て、バラスト粒子の形状や粒度分布等の道床バラストの品質、道床厚さ、路盤の剛性が道床バラストの沈下特性に与える影響について、バラスト粒子の形状評価や三軸試験、模型による載荷試験等から得られた知見をもとに概説する。



第173回月例発表会のページに戻る

HOME RTRI ホームページ

Copyright(c) 2004 Railway Technical Research Institute