第177回 鉄道総研月例発表会:境界領域における現象と相互作用

車輪/レール間の接触問題に関する最近の研究


鉄道力学研究部 部長 鈴木 康文

 鉄道における境界問題の中で、特に車輪/レール感の接触に係わる問題は重要である。摩擦係数関連では、内軌波状摩耗や外軌側摩耗防止を目的とした摩擦緩和材の開発、室内実験装置による摩擦現象に関する基礎的研究、粗さ接触を考慮した粘着係数推定法や真実接触面積の測定法に関する研究など、また摩耗や疲労損傷関連では、摩耗の要因と影響に関する研究、在来線のレール接触疲労層に関する検討など最近の研究について概説する。


パンタグラフ追随性能が接触力変動に与える影響


鉄道力学研究部(集電力学) 研究員 臼田 隆之

 架線・パンタグラフ系の性能向上のため、パンタグラフの動特性が接触力変動に及ぼす影響を検討した。その結果、接触力変動は架線とパンタグラフを直列結合した場合の機械インピーダンスにほぼ比例することを明らかにした。したがって、支持点間隔周期やハンガ間隔周期に相当する周期数における機械インピーダンスを低減するようにパンタグラフのばね定数やダンパ定数を選択することが接触力変動低減に有効であることがわかった。



急曲線低速走行試験における安全性評価法


鉄道力学研究部(車両力学) 研究室長 石田 弘明

 乗り上がり開始から脱線に至るメカニズムを明らかにし、低速走行試験を行う場合に、実測した輪重横圧データから輪重減少率を読み取り安全性を評価する手法と、軸距約 2mの一般的な旅客車両に対する輪重減少率の目安を提案した。この手法は、脱線防止ガードの設置されていない箇所を低速で走行する場合を評価の対象とし、車輪/レール感の摩耗係数が増大した場合の走行安全性を、試験データから直接判断できる点を特徴とする。



クロスアンカ式自己操舵台車の運動解析


鉄道力学研究部(車両力学) 研究員 飯田 浩平

 直線走行時の走行安定性を維持しつつ、曲線走行時の横圧低減を目的として、クロスアンカ方式による事故操舵台車の通勤電車への適用可能性を固有値解析および曲線通過シミュレーションにより検討した。その結果、蛇行動限界速度を維持したまま軸箱支持剛性を大幅に低くでき、円曲線走行時のアタック角を低減することができることがわかった。また、車輪・レール間の摩擦係数が上昇した際の定常横圧の増加を抑制する効果があることがわかった。



レール潤滑が車両・軌道の動特性に及ぼす影響


鉄道力学研究部(軌道力学) 研究員  青木 宣頼

 車輪とレール間の潤滑については、曲線における車輪フランジやレールゲージコーナの摩耗、あるいは内軌波状摩耗を抑制することを目的に行われている。一方、内軌側と外軌側の車輪/レール間の潤滑が車両と軌道の動的相互作用にどのような影響を与えているかについては、これまで十分に明らかにされていない。本発表では、それらの影響を総合的に検討するために実施した営業線および試験線における地上測定結果について報告する。



レールと車輪の摩耗要因とその影響


鉄道力学研究部(軌道力学) 主任研究員 金  鷹

 急曲線におけるレールゲージコーナと車輪フランジの摩耗に関して、摩耗に及ぼす各種パラメータの影響を定量的に評価することは、低減策の検討と保守の効率化を図る上で重要である。ここでは、JR在来線の修正円弧当面と50Nレールを対象とし、横圧(接触応力)、アタック角(すべり)、およびレール硬さなどの摩耗進みへの影響度を評価する室内摩耗試験を実施した。その試験結果と試験輪の表層の残留応力、塑性フローなどを調査し、摩耗進みとの関係を検討した結果について報告する。



フローティング・ラダー軌道と構造物の地震時挙動解析


鉄道力学研究部(構造力学) 主任研究員 浅沼 潔

 地震動に対する軌道と構造物の変形挙動および軌道の座屈挙動を考慮することができる非線形動的解析プログラムを開発し、低剛性ばねで浮かせた構造である防振材式フローティング・ラダー軌道を対象として地震時応答解析を行った。本報告では、本解析プログラムの概要およびその解析例として大規模の橋軸直角方向地震動に対する防振材式フローティング・ラダー軌道の座屈安定性の検証解析結果等について報告する。



高速車両走行に伴う橋梁振動と乗り心地および走行安全性評価


鉄道力学研究部(構造力学) 主任研究員 曽我部 正道

 新型高速車両の導入やPRC桁・斜張橋などの低剛性桁の実現により、桁の動的応答や車両の走行性といった、鉄道固有の問題に関する重要性が増している。本研究では、上記問題に関する各パラメータの影響度を動的相互作用解析プログラムを用いた数値解析により検討し、併せて、実構造物上での実車走行試験や車両試験台を用いた加振試験を行い、これらの結果を検証した。




第177回月例発表会のページに戻る

HOME RTRI ホームページ

Copyright(c) 2005 Railway Technical Research Institute