現在、降雨時における運転規制は、連続雨量と時間雨量を組み合わせて雨量の指標とすることにより行われていますが、雨量指標として新たに実効雨量を導入することが検討されています。実効雨量とは、地盤内に蓄積されている水の量を表す雨量指標で、半減期(過去に降った雨の影響度を示す時間で、半減期が長いほど水が地盤内に蓄積される)ごとに経時的に求められます(図1)。
一方、鉄道沿線の斜面が運転を規制する雨量値(規制雨量値)に達しない降雨の時に崩壊すると、列車が脱線・転覆するなど甚大な災害が発生する恐れがあります。このため、斜面の崩壊危険度を運転規制の雨量指標を利用して求め、求めた崩壊危険度と規制雨量値を比較することで斜面崩壊の弱点箇所を抽出することが必要です。
そこで、斜面の崩壊危険度を実効雨量で求めることができる評価表を、斜面の形態(盛土、切土)を考慮して実効雨量の半減期を設定し、半減期(1.5時間、6時間、24時間)ごとに作成しました(表1)。この評価表を用いて対象斜面の条件から限界実効雨量(その実効雨量を超える降雨の時に崩壊の危険度が高くなる値)を算出し、その値を斜面相互に比較する、あるいは規制雨量値と比較することで、崩壊に対する弱点箇所を定量的評価できます(図2)。開発した評価基準は、降雨時の運転規制に実効雨量が導入された場合には、容易に利用することができます。また、他の雨量指標を運転規制に導入する場合でも、同様にして評価表を作成できます。
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