1.車輪/レール間の動的転がり接触解析手法

 車輪やレールの劣化現象を解明するため、車輪/レール間の接触面の動的挙動を十分な精度で評価することが重要な課題となっています。そこで車輪/レール間の転がり接触を評価できるように、弾塑性を考慮した3次元大規模並列有限要素解析プログラムを開発しました。
 解析において車輪に回転トルクを加えて時速300kmまで加速するため、車輪通過後のメッシュモデルを再度利用するレールモデル(キャタピラメッシュ)を提案しました(図1)。これにより計算規模を大きくすることなく、長距離の転動を扱うことが可能となりました。また、レールモデル端部で車輪の転動による弾性波が反射すると、接触面での高周波応答の評価に影響があるため、弾性波が反射しないよう無反射境界を組み込んでいます。さらに、メッシュサイズの小さい大規模なモデルを実用的な時間で解くために、スパコンを利用した並列計算手法を構築しました。
 開発した解析手法により、1軸1輪モデルの時速300kmの高速走行を模擬した動的転がり接触挙動を再現し、接触面の応力状態(図2)や固着/すべり状態(図3)が評価できました。開発した解析プログラムは、レール波状摩耗やシェリングなどの発生メカニズムを解明するための有効なツールとなります。