第95回 鉄道総研月例発表会:信号と通信

最近の車両技術


部長 岡本 勲

 鉄道総研では車両に関する技術開発として、
1:速度向上や乗心地向上をめざした走り装置の性能向上や車体曲げ振動の抑制、
2:車体傾斜装置、輪軸操舵装置付台車、車輪直接駆動電動機、狭軌新幹線車両、独立車輪台車など新しい車両システムの開発、
3:車両の力行やブレーキシステムのインテリジェント化、
4:種々のシミュレーション技術の開発や制御技術の車両への応用、
5:車両保守に関連した新しい強度検査、メンテナンス技術の開発などを進めている。このような鉄道総研における最近の車両技術開発の動向を紹介する。



セミアクティブサスペンションシステムの開発


車両技術開発事業部(車両情報制御) 主任技師 佐々木 君章

 鉄道車両の左右振動を低減し、乗心地を向上するため、左右動ダンパの減衰力を動的に制御して揺れを小さくするセミアクティブサスペンションを開発した。このシステムは当初、新幹線用として開発を行い、JR西日本殿の500系新幹線車両に採用された。このシステムを在来線に適用する開発も進めており、既存車両に仮設して走行試験を実施している。本発表ではこの開発と試験結果について述べる。



制御付振子車両の開発


車両技術開発事業部(車両システム) 技師(係長) 榎本 衛

 在来線の曲線通過速度向上の決め手になる振子車両の導入が進んでおり、その中核技術である制御付振子システムは、走行地点を認識しながら車体傾斜を行うもので、日本独自の技術として開発が行われた。また、制御付振子をベースにした新しい車体傾斜方式についても開発が行われており、世界的にみてもますます需要を増やしている振子車両に関わる最近の情勢を報告する。



操舵台車の走行性能


車両技術開発事業部(車両システム) 技師(係長) 佐藤 栄作

 在来線の曲線通過速度を向上するため、制御付振子車両の普及とともに、操舵機構を組み合わせた台車の開発も進められ、実用化されている。本講演では操舵台車の目的、構造について述べ、主にボギー角連動式操舵台車の操舵効果や走行安定性等について、理論解析と走行試験結果から紹介する。



車体間ヨーダンパによる左右振動対策


基礎研究部(車両運動) 主任研究員 藤本 裕

 新幹線列車中の各車両の左右振動加速度の測定を行ったところ、ヨーイング振動が大きいことがわかった。ヨーイング振動を低減する車端装置をシミュレーションなどで検討したところ、車体間の相対折れ角速度に比例する力を出す車体間ヨーダンパの取り付けが振動低減に効果的であることがわかり、試作ダンパによる310km/hまでの走行試験で振動低減効果を確認した。このダンパは非連接車としては初めて500系営業車に採用される。



車輪一体形主電動機の開発


主幹技師 松岡 孝一

 NEXT250(次世代狭軌高速列車)等への適用を目指して、車輪一体形主電動機の研究開発を進めている。これは車輪と主電動機とが一体となって回転する直接駆動方式であり、減速歯車装置が無いため、低騒音、省保守、高効率等の利益が期待される。また主電動機の取付けスペースが節約でき、独立車輪台車の駆動方式としても適している。車輪一体形主電動機の基本構成、開発の一環として試作した電動機の概要、試験結果、制御方式等について紹介する。



進化した最新のブレーキ制御


車両技術開発事業部(駆動制御)技師(係長) 川口 清

 在来線や新幹線の一層の高速化や高減速化と、車輪/レール接触面の損傷の低減とを両立する上で、粘着限界近傍の微小滑り領域での滑走再粘着制御の実現が鍵となっている。これについて、マルチモード式ブレーキ制御法は、鉄車輪の微小滑り領域での再粘着制御を初めて実現し、今日の内外での微小滑り領域制御への流れを導いた。ここでは、その制御技術について、演算法や解析法、並びに在来線や新幹線での試験結果を含め、紹介する。



インバータ制御車両の空転再粘着制御


車両技術開発事業部(駆動制御) 主幹技師 渡邉 朝紀

 インバータ制御車両の空転再粘着制御については、長年取り組みがなされてきている。車輪/レール間の粘着という古くから把え難い現象と主電動機のインバータ制御という新しい課題が組み合わさっており、単純には最適な回答が出せないからである。しかし、これまでの走行試験での制御(「きめ細かな空転滑走再粘着制御」)や解析により、ここ1〜2年で空転に対する最適な取扱いがわかってきた。


第95回 鉄道総研月例発表会

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