第102回 鉄道総研月例発表会:軌道技術に関する最近の研究開発成果

マルタイによる軌道狂い補修の自動化・最適化


基礎研究部 研究主幹 吉村 彰芳

 復元波形を用いた軌道狂いの補修方法について、通り狂いに続いて高低狂いについても適切な移動量の計算手法を開発し、マルタイによる軌道狂い補修の自動化、最適化を可能にした。高低狂いの補修は地形上の制約(縦断線形)を考慮し、左右レールのカントを適正に保ち、「不動区間」や「こう上量」の制限を満たすことが要求される。今回、非線形最適化手法を応用して、これらの要件を満たす「こう上量」の新しい計算手法を開発した。これにより、特別な事前測量を行わなくても必要な軌道の精度が実現でき、効率的、かつ効果的な保守作業が可能となった。



シミュレーションによる新幹線軌道整備目標値の検討


基礎研究部 研究員 矢澤 英治

 新幹線の営業速度は300km/hに達し、さらに高速を目指した開発が進められている。このような速度向上に対応した軌道管理手法の検討の一環として、350km/hまでの速度域での、連続した高低狂いおよび通り狂いに対する40m弦軌道狂いの整備目標値を車両運動シミュレーションにより検討した。その結果、350km/hまでは現行の東海道新幹線の軌道整備目標値と同等の値で乗り心地が維持できる可能性が示された。



軌道動的応答モデルの構築とその応用


基礎研究部 室長 石田 誠

 鉄道の高速化を支えるためには、輪重変動の増大を抑制し、軌道材料の劣化・破壊および騒音・振動等を極力抑えることが重要であることから、特にレール溶接部あるいは車輪フラット等のレール/ 車輪間の不整により生じる軌道の動的挙動を解明する必要がある。ここでは、輪軸落下試験および車両走行シミュレーションによりこれらの現象を解明するための鉄道総研が構築した軌道動的応答モデルの応用について述べる。



材料劣化を考慮した軌道狂い経時変化の予測モデル


軌道技術開発推進部 技師 三和 雅史

 有道床軌道の保守周期の予測や軌道構造の選択等のための軌道状態の劣化・復元モデルの構築は重要な課題である。ここでは、材料の劣化(レール凹凸の成長、道床の劣化)や保守作業の不確実性を考慮した、より実態に近い軌道状態の経時変化モデルを提案した。更に、マルタイ、レール削正、道床更換の各作業の組合せによる軌道状態の経時変化や保守費等の試算により、本モデルの活用の可能性を検討した。



軸力を考慮したレール溶接部曲げ疲労寿命の推定法


軌道技術開発推進部 技師 高尾 賢一

 ロングレールの疲労寿命を決めている主な要因としては、レールシェリング等の接触疲労とレール溶接部の曲げ疲労の2つがあり、ロングレールの経年更換の基準は、レール溶接部曲げ疲労により決められている。ここでは、ロングレールの更換周期延伸を目的として、従来の寿命推定法にロングレール軸力の影響を付加することによりその精度を高めるとともに定期的なレール頭頂面凹凸削正による寿命延伸効果を検討したので紹介する。



レール溶接部の超音波探傷用斜角探触子の性能向上


軌道技術開発推進部 技師(係長) 工藤 松一

 屈折角45度の斜角探触子を用いた超音波探傷検査は、エンクローズアーク溶接部とテルミット溶接部の仕上がり検査として利用されている。探傷精度の向上を目的に、探触子の欠陥検出特性と耐摩耗性に着目して、高性能斜角探触子の開発に着手した。ここでは、従来品と比べ検出感度で 10dB以上優れ、2倍以上の耐摩耗性能を有する探触子が、実用化できる見通しを得たので報告する。



合成まくらぎの耐久性の検証


軌道技術開発推進部 主任技師 阿部 則次

 ガラス長繊維と硬質発泡ウレタンで構成された複合材料を成形した合成まくらぎは 1980年に開発され、各種基本物性値に関する詳細なデータを1985年に報告して以来本格的に実用化された。1995年までに橋まくらぎに換算し約30万本相当が使用されている。試験敷設後15 年が経過したことを機会に、 5年毎に実施した追跡調査に基づく合成まくらぎの耐久性の検証と新たに提案した橋まくらぎの経済的な設計法について報告する。


第102回 鉄道総研月例発表会

HOME RTRI ホームページ

Copyright(c) 1998 Railway Technical Research Institute