第137回 鉄道総研月例発表会:メンテナンス

鉄道総研におけるメンテナンスへの取組み


研究開発推進室 主管研究員 長瀬 隆夫

 長寿命化および診断検査法の開発に取り組み、長寿命架線、ちょう架線腐食劣化判定法、電車検査周期延伸、車軸・台車枠強度評価、車軸検査、長寿命潤滑材・空気ホース、エンジン・歯車装置非解体診断、信号機器電磁障害対策、トングレール接着状態照査、省力化軌道、道床強化、復元波形による軌道整備、レール溶接品質検査、鉄筋腐食診断、トンネル表面状態画像診断、コンクリート塩害抑制法、トロリ線・信号・軌道検測装置小型化等に成果を得た。


電線類腐食劣化判定法と自動診断手法の開発


電力技術研究部(電車線構造) 研究室長 島田 健夫三

 電気鉄道の電車線路で使用されている電線類は寿命管理によっており、目視検査によって残存寿命や取替時期を推定している。しかし、この種の方法では、腐食劣化による電線の寿命推定が難しく、電線の早期張替や断線事故等が発生している。このため、うず電流を利用した電線類の腐食劣化判定法を見出し、電線類腐食劣化判定装置を開発するとともに、そのセンサを搭載した検査ロボットによる電線類の自動診断手法を開発した。



集電系摩耗低減のための技術開発


電力技術研究部(集電管理) 研究室長 藤井 保和

 列車の高速化に伴うトロリ線の波動伝搬速度向上のため、トロリ線材料には軽量で抗張力に耐えうる特性が要求されている。一方、集電系騒音低減等のため1列車当たりのパンタグラフ数が削減されるとともに、すり板については耐摩耗性の向上が課されている。このような状況において、集電系を構成するトロリ線・すり板の摩耗低減のために実施してきた技術開発を発表する。



走り装置のメンテナンス


車両構造技術研究部(車両強度) 研究室長 石塚 弘道

 台車枠、輪軸、駆動装置等の走り装置部品は、車両の安全走行にとって極めて重要であるため、工場等にて定期的にメンテナンスが行われているが、鉄道総研では、より合理的な、また効率的なメンテナンスを目指して、新たな手法による台車枠、輪軸等に関する強度評価ならびにそれらの検査における非解体化もしくは自動化について、研究・開発を進めている。本講演では、それら走り装置部品のメンテナンスの現状ならびに今後の方向を述べる。



車輪/レール接触問題とレールのメンテナンス


鉄道力学研究部(軌道力学) 研究室長 石田 誠

 レールのメンテナンスにおいては、現在、転がり接触疲労損傷であるレールシェリング、レール溶接部の曲げ疲労、急曲線内軌に発生する波状摩耗、急曲線外軌に発生する側摩耗、そして車輪の空転による空転傷等が重要な課題である。これらの課題は、主に摩耗と疲労という材料強度に関するものと粘着という転がり接触現象に関するものであり、レールと車輪間の接触力学の面からそれらを理解し、対策を検討している現状を解説する。



軌道狂い管理の効率化と高品質化


軌道技術研究部(軌道管理) 研究室長 高井 秀之

 列車の走行安定性や乗り心地を確保するためには、軌道狂いを一定水準にメンテナンスする必要がある。軌道狂い管理技術は列車の速度向上に伴なって徐々に発展し、最近のデータ処理技術の導入により飛躍を遂げた。ここでは、軌道保守計画策定支援システム、高速走行に対応した長波長・短波長軌道管理手法、新しい軌道検測技術、復元波形を用いた軌道整備手法、急曲線・低速走行時の乗り上がり脱線について、その概要を紹介する。



道床・路盤の沈下抑制策と直結系省力化軌道構造の開発


軌道技術研究部(軌道・路盤) 研究室長 安藤 勝敏

 有道床軌道は、敷設費が安く、補修が容易である長所を有するが、列車の通過に伴い道床バラストが緩み、これによって生ずる軌道狂いの修復に定期的な保守を必要とする。このため、各方面で軌道沈下の実態解明に加え、各種省力化軌道の開発が鋭意行われてきた。ここでは、道床・路盤の観点から、最近の沈下メカニズムの解明と沈下抑制策への取り組み、直結系省力化軌道構造の改良・開発の現状について紹介する。



トンネルの維持管理


構造物技術研究部(トンネル)主任研究員)小島 芳之

 平成11年度に相次いで発生した鉄道トンネル覆工の剥落事故の教訓を踏まえ、鉄道トンネルの全般検査体系が大幅に見直された。現在、これを契機にトンネルの検査・診断・対策に関する技術開発が、内外で精力的に進められている。本発表では、連続走査画像や打音による検査・診断法、光ファイバによる変状監視法、地圧対策工の設計法、剥落対策工の設計法など、トンネルの維持管理に関する鉄道総研の技術開発の現状を報告する。


コンクリート構造物の維持管理


構造物技術研究部(コンクリート構造) 主任研究員 鳥取 誠一

 近年、コンクリート構造物の維持管理の重要性が再認識されている。ここでは維持管理実務の流れに沿って劣化予測、検査、補修・補強に関する総研における技術開発を、構造物の変状事例を交えながら説明する。また、学協会、鉄道以外の他機関における維持管理に対する最近の取組み状況についても紹介する。

              
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