第138回 鉄道総研月例発表会:最近の車両技術開発

最近の車両技術開発


車両制御技術研究部 部長 潤賀 健一

 リサイクル・省エネなどを含め、環境に対するやさしさが求められている。車両の制御においても重要なポイントである。今回、車両制御技術研究部の車両の動力制御、環境対策の他、最近の話題として、車両構造技術研究部の乗心地、走行性能、などについて紹介する。


車体弾性振動の低減法−台車との結合要素適切化による車体曲げ振動低減法−


車両構造技術研究部(車両振動) 副主任研究員 富岡 隆弘

 従来、車体曲げ振動低減対策は車体そのものに対するものが多かったが、本研究では台車系も含めた検討を行い、一体リンクなど車体台車間の前後系結合要素が車体曲げ振動に大きく影響しており、その低減には各特性値の組合わせと最適化が有効なことなどを示した。本手法の適用例として、数値計算結果に基づき新幹線の一本リンクとヨーダンパの緩衝ゴム特性を変更して走行試験を行い、曲げ振動低減効果が得られた事例についても紹介する。



台車諸元のバネ・ダンパ特性推定法


車両構造技術研究部(車両運動) 副主任研究員 下村 隆行

 ばね・ダンパの非線形性や取り付け部の剛性等の影響により、実台車の動的なばね系諸元が設計値と合っていない場合がある。そこで、実台車による実験結果と計算結果を比較検討することにより、実台車の動的な台車諸元を精度良く見出す手法(パラメータ同定)を開発した。これにより得られた諸元を用いて計算した蛇行動限界速度と試験結果を比較し、本手法の有効性を確認した。



車輪踏面粗さと転動音


車両制御技術研究部(ブレーキ制御) 主任研究員 小原 孝則

 近年、鉄道騒音の中でも車輪・レール間の転動音がクローズアップされている。転動音へ影響を与える要因の一つとして車輪の凹凸があげられる。ここでは、模型転動試験機を用いたブレーキ試験を行い円周方向凹凸の変化を調べた。その結果、実車の滑走現象にあたる車輪・ブレーキ間の”すべり”が凹凸増大に影響を及ぼしていること、また凹凸増大により人間の耳にうるさく聞こえる周波数帯の騒音レベルが増大することが確認できた。



誘導電動機の速度センサレス制御


車両制御技術研究部(電気動力) 副主任研究員 近藤 圭一郎

 誘導主電動機の回転センサの省略により、安価で信頼性の高い主回路システムの実現や主電動機の出力向上が可能となる。そこで、本発表では速度センサを用いずに、現存の車両と同等以上の車両性能を有する速度センサレス制御方式の鉄道車両への駆動に関する研究成果を報告する。具体的には、構内走行試験や車両試験台試験による検証結果を踏まえた、鉄道車両駆動用誘導電動機駆動制御システムのあり方について述べる。



降積雪時のブレーキ特性


車両制御技術研究部(ブレーキ制御) 研究員 宗重 倫典

 列車のブレーキは、いかなる条件下においてもその性能を維持しなくてはならない。しかし摩擦力を利用する機械ブレーキは、摩擦面に水等が介在すると摩擦係数が低下して、ブレーキ力が低下する。特に、ブレーキ力低下は氷雪の介在時に顕著である。鉄道総研所有のブレーキ性能試験機は降雪状態を模擬したブレーキ試験を行うことが可能である。降雪条件下のディスクブレーキ試験を行い、そのブレーキ特性を把握した。



高速域での電気ブレーキ力増大方法


車両制御技術研究部(駆動制御) 副主任研究員 加藤 宏和

 鉄道車両の電気機器は力行性能として必要十分となるよう設計されている。従って、中高速域ではモータのトルクが低下するため、低速と同様のブレーキ力を要求される在来線においては電気ブレーキのみでは不足する。このため機械ブレーキが多用され、メンテナンスコストを増大させる要因となっている。そこで、中高速域において電気ブレーキ力を増大させる方法について検討及び試験台試験による効果の確認を行ったので、報告する。



ディーゼル車両の検修支援システム


車両構造技術研究部(走り装置) 主任研究員 小林 秀之

 ディーゼル車両の検修において、機関出力の測定は工場入場時に機関を車体から降ろし馬力試験台で実施される。検修の効率化に資するため、車両走行中の機関出力等を測定するエンジンデータ収集装置を開発した。この装置は、変速機内のトルクコンバータ入力トルク特性を利用し、機関回転数(コンバータ入力軸)と車速(コンバータ出力軸)などから機関出力を求めることを特長とする。エンジンデータ収集装置の概要について報告する。

              
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