第145回 鉄道総研月例発表会:最近の電力技術

鉄道電力技術の研究開発動向


電力技術研究部 部長 長沢 広樹

 列車の運行に関わる、き電と集電技術の研究開発動向を概観する。環境保全と省エネルギーのために、変電所における電力貯蔵方法の検討や材料の長寿命化とリサイクルについて検討が進められている。また、保守の効率化のために、地上や車上における設備診断技術の向上や保守負担の少ない設備の検討も行われている他、電力設備にも信頼性評価を取り入れる動きがある。


銅系単一構造剛体電車線の基礎検討


電力技術研究部(電車線構造) 研究員 山川 盛実

 剛体ちょう架式電車線は、地下鉄等で広く使用されている。今回、リサイクル、省メンテナンス、高速走行が可能な剛体電車線の開発を目的として基礎検討を行った。たわみ量を考慮して、形状をT型とした銅系単一構造について試作を行い、静的な機械的・電気的特性を確認した。その結果、アルミ架台タイプと同等のたわみ量が得られることが分かった。



アルミき電線圧縮接続部の断線メカニズムと診断


電力技術研究部(電車線構造) 主任研究員 鈴木 顕博

 アルミき電線圧縮接続部の断線は、素線間やスリーブとの間の接触面の劣化が原因となっている。酸化または腐食劣化による接触抵抗の増加でスリーブ全体が過熱溶断する断線プロセスのほか、この接触抵抗が不均等になった場合はアルミ電線内の電流分布がアンバランスとなり、一部の素線が過電流となって順次破断することが明らかになってきた。従来のサーモラベル以外に検討中の新たな診断方法とともに紹介する。



架線・パンタグラフ間の接触力測定とその特性解析


鉄道力学研究部(集電力学) 主任研究員 池田 充

 鉄道総研では架線・パンタグラフ間の接触力測定手法の開発を進めており、最近ではシングルアームパンタグラフを含む様々なパンタグラフで接触力の測定が可能となってきた。さらに次のステップとして、接触力測定結果を電車線の設備診断へ活用する技術が求められている。本発表ではこれまで開発した接触力測定手法を述べるとともに、接触力変動の特徴や周波数分析結果、およびトロリ線摩耗との関連などについて解析例を紹介する。



電車線オーバーラップ構成の接触力による診断


電力技術研究部(集電管理) 副主任研究員 寺田 泰隆

 新幹線総合試験車に接触力測定用パンタグラフを取付けて検測データと共に収録し、電車線オーバーラップ箇所における接触力とトロリ線摩耗の関係等を調べた。その結果、接触力とオーバーラップ構成及びトロリ線摩耗率の間に定量的相関があり、これにより、オーバーラップ箇所におけるトロリ線局部摩耗を予測出来る可能性が見出せた。



離線データ自動処理装置の開発


電力技術研究部(集電管理) 研究員 根津 一嘉

 パンタグラフの離線測定は現車試験の際にしばしば行われているが、離線率や最大離線時間の集計は手間のかかる作業になっている。今回、パンタグラフ集電電流の信号を基にリアルタイムに離線の検出を行う装置と、検出された離線の信号を基に離線率や最大離線時間の集計をパソコン上で行う装置を開発した。これにより離線集計作業の効率化と、現車試験中にほぼリアルタイムに離線率等が出力される速報性が実現できた。



超高圧受電箇所に適した新幹線き電用変圧器の開発


電力技術研究部(き電) 研究員 安藤 政人

 現在、一次側中性点直接接地方式となる新幹線の超高圧受電箇所の変電所において、変形ウッドブリッジ結線変圧器が、き電用変圧器として使用されているが、昇圧変圧器を必要とする等、結線方式が複雑となっている。そこで、簡易な結線方式で、実現できる数種のき電用変圧器の基礎検討を行い、ルーフ−デルタ結線(仮称)を選定し、試作した変圧器ミニモデルを用いて各種検証試験を行った結果、採用できる見通しを得た。



電気二重層キャパシタを用いた電力貯蔵の基礎試験


電力技術研究部(き電) 主任研究員 長谷 伸一

 近年、電気自動車用の駆動電源用として電力貯蔵媒体の開発は目覚しいものがある。その中でも、急速充放電が可能で、長寿命、省メンテナンス、低公害、高効率な電力貯蔵媒体として、電気二重層キャパシタの大容量化が急速に進展してきている。電気二重層キャパシタを貯蔵媒体とした、直流電気鉄道対応電力貯蔵システムのミニモデルを試作し、その基本特性を確認したので、本講演ではその結果を報告する。

              
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